サード・レター
「ねぇどう思うこの問題?」
隣に座っていた女の子にノートを渡したい。
「そうね......さっき先生が使った数式じゃ駄目みたい。」
「だろ?やっぱそうだー後で聞こう。」
「うん、因みにこれチェックして。」
今度は僕がノート渡された。
「どれどれ......」
そう、隣に座っていた女の子が刹那ちゃん。
二人が通ってた塾が新しいやつだった。
スケジュールとか結構自由な感じで同じクラスに変更した。
刹那ちゃんと会ったからもう数週がたった。
休憩の時間に二人でよくあの使われてない自販機に行ってぶらぶらするけどあの日の授業が特に難しかったらこうして教室に残って一緒に復習した。
でもあの日、勉強じゃなくて別の事考えていた。
(もう直ぐ......)
「あのさー」
刹那ちゃんが振り向いたけど、丁度先生が戻ったので休憩が終わった。
「ん?」
「いや、何でも無い。」
取り敢えず誤魔化すしかなかったけどお陰でその後の授業ずっと落ち着かなかった。
「今日はここまでにしましょうか。明日はクリスマスイブですが、受験生である事を意識して下さい。」
クラスの皆が「空気読め」なんて考えてる顔してた。
そう次の日がクリスマスイブだった。
ずっとそわそわしてた理由が刹那ちゃんを誘うタイミングが中々見つからなかったから。
(最近土日に既に一緒に居る感じがするけど正直刹那ちゃんが僕の事何だと思っているか全然読めない。割と仲が良い友達だと思いたいけど、仮にそうだとしても一緒にクリスマスイブなんて......そもそも誘って良いのか?気まずくならないかな?)
「ね、真生君さっきー」
「あのぉ!」
刹那ちゃんが何か言おうとした瞬間に今までと話してなかったクラスの子が急に声掛けてきた。
「あのー今年のクリスマスイブせっかく日曜日に当たったのに私達塾あるじゃん?勿体ないと思ってさぁ、だから明日近いカラオケ屋さんでクリスマスパーティするんだ。二人来る?」
「へーそ、そうですか......」
横から刹那ちゃんがチラッっと一瞬目が合った。
(何?僕が行くならって事?なるほど......二人だけなら気まずいけどクラスのクリスマスパーティなら大丈夫か。確かにそしたら普通にクリスマスイブ過ごせる。え、もしかして助けられた?)
「良いじゃん、行こう。」
っで刹那ちゃんと一瞬だけ目が合った。
「......うん、行きます。」
(な、何だ?)
「はいはい〜!じゃ、連絡先交換しよう。後で詳細とか送るから。」
その瞬間、刹那ちゃんの連絡先まだ持ってなかったと気づいた。
それまで聞くもしなかったなんておかしいと思った。
まるで一緒に過ごしていた時間が別世界だったからとか。
(本当にこれで良かったのか?)
刹那ちゃんの事少しずつ分かるようになていたと思ったけど、その時の表情全く読めなかった。
(表情硬過ぎやろ......)
トイレの中まで色んな人が歌ってる音が届いてる。
約束通り、刹那ちゃんとクリスマスパーティに来た。
何故か昨日から刹那ちゃんと若干気まずく感じたからこうしてずっと顔洗っていた。
(でもまぁ......刹那ちゃんもクラスで友達無いからあんま長く一人にしたら駄目だな。)
どうして編な感じになったか分からなかったけど、ちゃんと向き合うしかないと覚悟を決めた。
(先ず戻ってー)
「あっー」
「真生......君?」
「や、やぁ奇遇だなぁ......」
「......ふっー何それ。」
お互い爆笑した。
何故って刹那ちゃんも丁度トイレから出てんだ。
「多分同じ事考えたね。」
「そうみたいね。」
(ったくー何悩んでた僕......)
「じゃ、戻る?」
「......しなくて良くね?」
「え?」
最初はめちゃくちゃだったけど最後はちゃんとするとそこで決心した。
「こういうの......今まで興味無かったのに......」
「......分かる。」
クラスの皆をすっぽかして町に回ってた。
大通りのイルミネーション、商店街のでかいクリスマスツリー、外でケーキを売ろうとしてるサンタコスの学生達、色々見たんだ。
ケーキと飲み物を買って、どっか休憩出来るとこを探したら見覚えがある場所に着いた。
「何でしょうこの感じ......ここに会ったからもう一ヶ月ぐらいね。その時こうしてクリスマスでピクニックみたいな事をするなんて......分からないね、人生。」
ケーキを食べながら話していたんだ。
「大袈裟だなぁ、若い時に色んな出会いがあるの当然さ。凄いのは刹那ちゃん自身じゃね?僕から見たらあの日からだいぶ変わったんだ。」
「それは......そうかも。」
(今しか無いか。)
「あのさ......」
覚悟を決めた。
「何、真生君?」
(言いたい事もう知ってるっぽい。)
やるしかない。
「あの日さぁ、僕の事気づいた前にー泣いてたよね?」
「うん。」
「っで気づいた時何かポケットに入れたと思う......紙とか?」
「何だ〜そこまで気づいたか......凄いね真生君。」
とか言ってたけどあんまり悔しそうに聞こえなかった。
どっちかと言うと安心した声だった。
(まるでこっちからこの話を持ち出すの待っていたような......)
「僕の事どう思うか分からないけどもしー僕で良いなら刹那ちゃんの話を聞きたい。」
暫く波の音しか聞こえなかった。
たまにケーキを食べて、缶コーヒーで温める。
ただ喋らずに座っていた。
「あの日......真生君が私をここで見付けた時ー病院から帰るとこだった。」
刹那ちゃんが漸く喋り始めた時、言葉に集中過ぎてたまに息をするの忘れてた。
「昔から心臓が弱くてさ、それを監視するために定期的に診察があるのよ。でもそうねー今までそんなに危ない状態になった事無いから......なめたかも。」
(僕から聞いたかったと分かってる。会った時からずっと気になったぐらい......でも自分の中の何かがもう知りたくないと言っている。)
「いつも通りなはずだったのに......いきなり前より心臓が悪くなっちゃたと医者さんが言ってた。その後色んな検査があったけど結果はー」
「刹那ちゃん......」
「ーもう助けられないって。今まで飲んでた薬を増やしても......後二、いや多分一年ぐらい。」
「......」
全く想像してなかっただと......言えなかった。
まるで僕の心臓が止まったーいや、逆に動悸だったとしてもおかしくなかった。
「あのさ......」
「何?」
刹那ちゃんと見つめ合ってた。
「一生側に居させて。」
「......私にとって一生かもだけど、真生君にとって二年でも無いよ......ごめんね。」
「何時死ぬか誰だって分かんねぇよー刹那ちゃんの方が長生きかも知んないじゃん......」
「真生君、良いの?残された時間が少ない私に愛着して?」
「だから誰だってそうだよ!」
「分かってるよー好きになったら真生くんに酷いって......でもーわがまま言うって良い?」
「言うって欲しい。」
「残りの時間......一緒に居て下さい。」
「逆に居させてくれ。」
抱き合う事になった。
離れたくなかったから背中に溜まったまで雪が降き始めた事を気づかなかった。
刹那ちゃんがくしゃみし始めたからさすがにもう帰らなくちゃけど。
「行こうか。」
「うん。」
「春になったらまたこの砂浜に戻ろう。」
「ふふっーそうね。」
あの夜、沢山涙流した。
刹那ちゃんは最後まで泣いてなかったけど。
でもなんだかんだ言って人生最高のクリスマスだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます