ファースト・レター

真面目な高三だから土日は塾に通った。

当然、嘘だけどね。

いや、本当に塾に通ってたけど、真面目だからじゃなかった。

ただただひたすら不安を燃料にしていて塾だけで勉強した。

授業は昼から日没までだったけど。

実際家に到着する時はすっかり暗くなった。

友達とか彼女とか遊んでたわけじゃない。

家が遠かったからでも無い。

ある砂浜があった。



塾は今年の夏休みから通ってた。

なぜか終わったら直ぐ帰りたくない。

べつに親と仲が悪かったとかじゃなくて。

そんな気分だっただけ。

特に予定がなくても町でぶらぶら彷徨ってた。

それである砂浜を何回も通りかかった。

最初はなんとも思ってなかった。

特に奇麗とかじゃなかったし、地元の人なら普通に遊んでたけど多分旅行ガイドに書いてないと思う。

時期が寒くなるとわず少ない来てる人まで来なくなった。

十一月になった以、来通りかかったたび見かけていた若者のグループ、カップル、子供達、そして老人達も皆見かけなくなった。

そんな寒くて孤独なとこだったこそから僕がその砂浜が気に入ってた。



その日もまた砂浜に向かった。

あそこで何かしたかったわけじゃない。

ただ町を何回回ったらなんとなくあの砂浜に戻りたくなっちゃう。

座ったり、砂に書いたり、石を蹴ったり。

本当にしょうもない事した。

空が紫になって、風が海に向かって吹い始めた。

この町が好きだと言えるかどうか分からないけど、少なくとも夕方の景色は嫌いじゃなかった。

そう、見ながらよくぼうっとしてた。



後ろにでかい音が急に聞こえた。

びっくり過ぎて倒れていつの間にか道路に座ってた。

数秒間、耳が鳴っていた。

さっきまで歩いてたとこでトラックが電柱にぶつかったって事。



全てが片付けたまでに太陽がとっくに沈んだ。

どうやら運転者さんが前の日からずっと仕事して数分の間でしか寝れなかったらしい。

怒こるべきだったかな?

かもね、でもその気じゃなかった。

まだショックだったかも。

警察に少し質問されたけど、運転者さんは素直に協力したから割と早く済んだ。

無傷じゃなかったら恐らく親まで呼ばれたけど。

嘘だけどね。

外から見えなかったけど、手のひらと膝から少し血出てた。

まぁ、大した怪我じゃなかったから大袈裟にしたくなかったわけさ。



遅くなったから砂浜であんま長くぶらぶら出来ないけど、通り過ぎるぐらいなら大丈夫。

っと色々考えていた瞬間に見かけた。

砂浜で一人の少女が立っていた。

暗くてもなぜかはっきりあの子の姿ははっきり見えた。

良く見ると制服来てたけど、うちの学校のやつじゃなかった。

声掛けようなんて思ってなかったし、当然そこで立ってじっと見るつもりじゃなかったけど結局思わずやってしまった。

彼女が振り向いた時僕が何分間そっから動かずぼうっとしてたか分からなかった。



「あの......」

(声小さっ!)

「えっと......その......」

(良く見たら思ったより可愛い。)



彼女は細くて、身長は僕より数センチだけ低かった。

表情はちょっと硬いけど、顔の特徴がきちんとした前髪に額装してた。

一番目立つのはその明るい目。

ひと目見て伝われた情報を内部化してやっと気づいた。



「あのさー塾で見た事ある?」



周りの事あんまり見ない僕と言ってもこんなに目立つ子ぐらいはなんとなく印象に残る。

記憶に探していたたような顔だった。



「ごめんなさい、お会いした事ありますか?」



恐らく知り合いを忘れたかと思っていて少し恥ずかしがってる笑顔を見せた。



「あ、いやただー結構目立つからどっかで見た事ある気がしただけ。」

「あぁそ、そうですか......」

「邪魔したらごめん。塾が終わったらいつもここに来るけど誰かと遭遇したのは初めて。」

「だ、大丈夫です。塾から帰るとこでなぜかここに様よちゃって......もう帰ります、えっとー?」

「あ、同い年だろ?真生で良いよ。」

「え?わ、分かりました.......それじゃー刹那です。」

「じゃ、またな。」

「......はい。」



彼女がそのまま帰ちゃった。

一瞬だけだったけど周りの空気がいつもよりちょっと温かかった。

(刹那さんか......)

性格はまだなんとも言えなかったけど見た目からの印象は元気で明るい子だったー硬い表情と笑顔はともかく。

っと言いたいがー

(僕の事気づく前に泣いてたよね......)

一人で考えても何も分からないから取り敢えず帰ろうかと思った。

ちょうど手と膝も痛くなり始めたから。

いや、それまで気づいてなかっただけかも。

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