第289話 慟哭
「フゥ...ステラさん、とにかくまずは落ち着いて下さい。というか、先に服を着て下さい」
「あっ! す、すいません...わ、私ったらなんてはしたない...」
少し冷静になって恥ずかしくなったのか、放り出したリュックの中から着替えを引っ張り出してそそくさと服を着るステラさんの姿を、私はなんか懐かしい気持ちで眺めていた。やがてステラさんが服を着替え終えた後、私は徐に尋ねた。
「それで!? ステラさんはなんで私がこの町に居るって分かったんです!?」
「セリカさんがギルドに尋ね人の広告を出したんです。それでこの町のギルドから連絡がありまして、私が先行して飛んで来たって訳です」
やっぱりそうだったか...どうやらナディアさんが私だって気付いたらしいな...まぁ、なんにしても時間の問題だったのかも知れないけど...
「なんでそんなことを!? もう私とあなた方はなんの関係も無いはずですよね!?」
「そんなこと言わないで下さい! カリナさん! 私達が間違ってました! ごめんなさい! 謝ります! 謝りますからカリナさん、お願いだから戻って来て下さい! もう二度とカリナさんに逆らったりしません! 誓います! だからお願いします! どうか、どうかお願いです! お願いじばず~!」
そう叫んでまたステラさんは泣き出してしまった。困ったなこりゃ...
「あ、あの...カリナさん、この方は...」
フローラさんが困ったような顔でおずおずと話し掛けて来た。あぁ、確かにこんないきなり修羅場みたいな状況になったらそりゃ戸惑うよね...ホント申し訳ない...
「フローラさん、すいません。この人はステラさんって言って、私の元パーティーメンバーなんですよ」
「もどじゃありばぜん! まだメンバーでず!」
「ステラさん、ちょっと黙ってて下さいね...ややこしくなるから...」
まず涙と鼻水を拭いて欲しい...
「ハァ...そうなんですね...それでその方がなんでまた...」
「いや、私が聞きたいくらいなんですが...」
私とフローラさんは二人して顔を見合わせて困ってしまった。
「チーン! フガフガ...」
ステラさんは泣きながら盛大に鼻を擤んでいるし...どうでもいいが汚いな...
「ステラさん、とにかくここじゃなんなんで場所を変えましょう。すいませんが、フローラさんもそれでいいですか?」
通りで騒いでる私達に通行人の視線が集まって来ちゃったからね...
「えぇ、構いません...」
取り敢えず私達は、まだ泣き続けているステラさんを引き摺るようにしてその場を離れた。
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