第285話 観光

「え、え~と...そ、その...ふ、不束者ですが、よ、よろしくお願いします...」


「どういたしまして?」


 良く分からない挨拶をしながら、フローラさんはベッドに潜り込んで来た訳なんだが、あれって一体どういう意味だったんだろ?


 まぁいいや。眠いしさっさと寝ちゃおう。お休みなさい...zzz


 眠りに落ちる直前に、


「わ、私、は、初めてなんで、や、優しくして下さいね...」


 そんなフローラさんの声が聞こえたような気がしたけど、きっと気のせいだよね? 夢でも見たのかも知れないね。



◇◇◇



 そして翌朝。


「フワ~アッ...良く寝たぁ~! あ、フローラさん、おはようございます」


「おはようございます...」


「良く眠れました?」


「えぇ、とっても...」


 なんだろう? フローラさんが不機嫌なんだけど。あ、もしかして...


「あの...私、イビキとか歯軋りとか寝言とかうるさかったりしました?」


「いいえ...静かなもんでしたよ...」


「それじゃあ寝相が悪くてフローラさんを蹴っ飛ばしたりとか?」


「いいえ...なにもしなかったですよ...」


「あぁ、良かった~...ん? じゃあなんでフローラさんは不機嫌なんです?」


「カリナさんがなにもしなかったからじゃないですか...」


「えっ!? 今なんて!?」


 声が小さくて良く聞き取れなかったよ。


「いいえ...なんでもありません...それより朝ごはんにしましょうか...」


「ハァ...」


 なんだろ? 良く分かんないや。



◇◇◇

  


 朝ごはんはフローラさんの手作りだ。ベーコンエッグに野菜のスープ、焼き立てトーストにオレンジジュース。朝の定番メニューだね。


 うん、中々のお味だ。フローラさん、料理上手なんだね。


「ごちそう様でした。とっても美味しかったです」


「お粗末様でした」

  

「フローラさん、今日のお店は何時からですか?」


「あ、私、今日お休みの日なんです」


「そうなんですね。じゃあフローラさん、良かったら私にこの町を案内してくれませんか? 他に用事がなかったらでいいんですが」


「構いませんよ。特に用事もありませんし」


「ありがとうございます」


「ちょっと待って下さいね。お弁当作りますから」


 フローラさんが台所に向かおうとするのを手で制する。


「あぁいえいえ、お構い無く。この町の料理屋で食事もしてみたいですし」


「あ、そうですよね。じゃあ早速行きましょうか」


「すいません、お願いします」


 こうして鉱山都市ビエンの観光ツアーというか観光案内がスタートした。

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