第280話 疑惑

「さて、長々とお話してしまいましたが、改めてあなたが依頼を受注するということでよろしいんですね?」


 受付嬢さんが仕切り直した。


「あ、はい。お願いします」


「では冒険者カードを拝見します」


「はい、どうぞ」


「お名前は...カリナさんですね。うん?」


「なにか?」


 受付嬢さんは私が差し出した冒険者カードと私の顔を交互に見ながら首を傾げた。


「いえ、あなたの顔をどっかで見たような気がしまして...」


 ギックゥッ! そりゃ見覚えがあって当然だわ! ギルドの職員なら尋ね人の広告を見てるだろうし!


 マズいな...なんとか誤魔化さないと...


「き、気のせいじゃないですかね~...ほ、ほら、私みたいな顔なんて有り触れてますし~...」


「いやいや、あなたのような美人さんの顔は一度見たらそうそう忘れませんよ?」


「やっぱりそう思いますよね~! カリナさん、そういった自覚が全く無いみたいなんですよ~!」


 参ったな...私の顔なんて大したもんじゃないはずなのに...それとなんでフローラさんまで乗っかっちゃってるんだ!?


「と、とにかく! 依頼の受注手続きを早い所お願いしますよ! フローラさん、そろそろ開店時間になるでしょ?」


「あ、そうでした!」


「はぁ...なんかスッキリしないけど...分かりましたよ...それじゃあフローラさん、手数料のお支払いをお願いします」


「えっ!? あの...その...」


 フローラさんが固まっちゃったよ。当然ながら持ち合わせが無いんだろう。まぁこれは私がちゃんと説明しなかったせいだから仕方ない。だから、 


「はい、手数料です」


「えぇっ!? カリナさんが払うんですか!?」


「そうですがなにか問題でも?」


「い、いえ、問題はありませんが...聞いたことありませんよ...依頼を受注した冒険者が手数料を払うなんて...」


「色々と事情があるんですよ。それより受注処理を早く進めて下さいな」


「わ、分かりました。少々お待ちを...」


 受付嬢さんが席を外した後、フローラさんがコッソリ話し掛けて来た。


「あの...カリナさん...なんかその...すいません...」


「気にしないで下さい。手数料のことを伝えなかったのは私のミスですから」


「いえそんな...色々とお世話して頂きまして本当にありがとうございます...」


 応えようとした時、受付嬢さんが戻って来た。


「お待たせしました。依頼の受注処理が完了しましたので契約書にサインをお願いします」


 フローラさんが契約書にサインしてようやく依頼の受注が完了した。

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