第270話 捜索

「わ、私、上空から探してみます!」


 言うが早いか、既に全裸となったステラは外に飛び出して行ってしまった。


「お、おい! ちょ、ちょっと待てステラ!」


 カリナがずっと亜空間に潜んだまま移動していたら、上空からだろうがどこからだろうが、見付けることなんか出来ないだろうに。


 そう言おうと思ったのだが、ステラは既に空の上だった。


「う~ん...騒がしいなぁ...ママぁ、なんかあったのぉ~?」


 騒がしくしていたせいか、お昼寝していたルキノが起き出して来てしまった。


「あ、あぁ、ゴメンね、ルキノ...騒がしくしちゃって...なんでもないのよ...気にしないで...」


 アスカは取り繕ったような笑みを浮かべてそう言った。とてもじゃないが、ルキノに真実を伝えることは出来そうになかった。なにせルキノが一番良く懐いていたのはカリナだったのだから...


「ふうん...そうなんだ...まぁいいけど、それよりもカリナお姉ちゃんはどこ?」


「えっ!? あ、あの、そ、それは...」


 突然の我が娘の問い掛けにアスカがしどろもどろになる。見かねたラウムが、


「る、ルキノ、か、カリナお姉ちゃんはな...い、今ちょっと...そ、その...お、お出掛け! そう、お出掛けしてるんだよ!」


 咄嗟にそう言い繕った。


「えっ!? そうなの!? おかしいな...」


 ルキノが首を捻る。


「な、なにが!?」


 ラウムの顔に脂汗が浮かぶ。


「だってさっきまでカリナお姉ちゃん、ルキノの部屋に居たもの」 


「な、なんだって!?」


「る、ルキノ! そ、それ本当なの!?」


 ラウムとアスカの二人が凄い勢いで食い付いた。


「う、うん...た、多分...」


 その勢いに若干引いたルキノは自信無さげにそう答えた。


「多分って!?」


「う~ん...もしかしたら夢を見ていたのかも知んない」


「夢!? どんな!?」


「カリナお姉ちゃんが泣いてる夢」


 そのルキノの言葉に、アスカとラウムの二人は凍り付いたように固まってしまった。


「カリナお姉ちゃんね、泣きながらルキノの髪を撫でてなんか言ってたんだよね。なんて言ったのか良く覚えてないけど。あれって夢だったのかなぁ...うぷっ!? ま、ママ!?」


 限界に達したアスカは、ルキノを抱き締めて声を押し殺しながら涙を流した。そんな二人を呆然と見詰めるラウムの目にも涙が光っていた。


「ま、ママ!? ど、どうしたの!? 泣いてるの!?」


 ルキノだけが訳が分からず戸惑っていた。


「な、なんでもないのよ...ルキノ、ママちょっとお出掛けするからお留守番しててくれる?」


「う、うん、分かった...」


「ベビーシッターさんには連絡しておくからね...ラウムさん、行きましょう!」


「あぁ、分かった!」


 二人は涙を拭いてパーティーホームを飛び出し、カリナを探しに向かった。当てなんかなかったが、ジッとなんかしていられなかったからだ。

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