第268話 別れ
さて、これからどうしようか?
いきなり私が消えたことで右往左往しているパーティーメンバー...いや、もう元パーティーメンバー達になるのか...の姿をボンヤリと眺めながら私は一人、亜空間の中で考え込んでいた。
悲しくないと言えばウソになる。短い間ではあったが寝食を共にした仲なんだ。そりゃ当然だろう。
さっき言ったことは本音だった。実の家族に恵まれなかった私は、家族という名の温もりを無意識に求めていたのかも知れない。
きっとその辺りが、他のみんなとの価値観の違いになって行ったんだろうな...当たり前のことだけど、私達の仲って利害関係の上で成り立っているんだよね。
私がパーティーのためによかれと思って提案したことだとしても、彼女達に取ってみれば自分達の生活を脅かされる恐れが少しでもあると思ったら、反対に回るのは考えてみれば当然の帰結なんだよね。余計なことをするなって感じかな。
ダメだな...そこら辺を分かってあげられなかった私はリーダー失格だよね...今じゃなくても何れは破綻する運命だったのかも知れない...それがたまたま今になったってだけの話って所かな...
もう誰かとパーティーを組むのは止めよう。元々一人だったんだし、その立ち位置に戻るだけだ。悲しいけど仕方ない。
そう決心した私は、未だ右往左往している元パーティーメンバー達を尻目に、もう一人にだけ別れを告げてからここを出て行くことにした。
ちょうど今、お昼寝中のルキノちゃんである。寝ててくれて良かった。こんな場面を見せたくなかったからね。
私はそっとルキノちゃんの寝室に入った。ルキノちゃんの安らかな寝顔を見た瞬間、込み上げて来た嗚咽を口を塞いでなんとか堪えた。ルキノちゃんを起こしちゃ可哀想だからね。
「ルキノちゃん、お元気で。もう病気しちゃダメですよ。いっぱい食べていっぱい遊んで大きくなって下さいね。いつでも見守っていますからね」
ルキノちゃんを起こさないようにそっと囁いたらもう限界だった。止めどなく涙が溢れて来てしまった。
私は最後にルキノちゃんの髪にそっと触れ、アクセル様に掛けたのと同じ魔法『亜空間シールド』を発動させ、ルキノちゃんの元を離れた。
これで少なくともルキノちゃんは、物理的な攻撃を受けたとしても無効化できるはず。とはいえ、普通に生活してる分にはそんな場面に遭遇することなんてそうそうあるはずないんだけど。まぁでも一応は念のためにね。
それじゃあみんな、さようなら。
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