第267話 決断
「あ、あの...カリナさん...」
次はまたアスカさんが話し出した。
「とっても言い辛いんですが...その...私はルキノと二人、慎ましやかに生きていければそれだけで十分満足なんです...今回、思わぬ収入でそれが可能になりました...えっと...それで...つまりですね...」
「もう危険な思いをしてまで稼ぐ必要は無いって言いたい訳ですね?」
私は言い辛そうにしているアスカさんの言葉を引き継いだ。
「は、はい...すいません...」
「それって要するにパーティーを抜けたいって意味に捉えていいんですね?」
その決定的な一言を私が言うとアスカさんは慌てて、
「い、いいえ! いいえ! 抜けたいなんて思ってはいません! 確かにこの中で私は一番の新参者ですし、唯一の子持ちでもあります。でもそんな私を、私達を皆さんは温かく迎えて下さいました。とても感謝しております。その気持ちにウソはありません。まだ日は浅いながら、皆さんと過ごす日々はとっても楽しいです。ただ...出来れば...」
そこでまたアスカさんは言葉を詰まらせた。その後に続く言葉は容易に想像できる。
『楽をして稼ぎたい』
こういうことなんだろう。
私は全員を見回してみた。すると大なり小なり、みんな同じように浮かない顔をしていることに気付いた。
「もう一度聞きます。皆さん全員同じ考えなんですね?」
「......」
沈黙が答えだった。
「その...済まない...カリナ...新参者であるのは私も同じだが、私はなにもそんな特別なパーティーに入りたいと思っていた訳じゃないんだ...普通に冒険が出来ればそれで十分だった...それはきっとアスカも同じ思いなんだと思う...そしてもしかしたら他のみんなも...」
ラウムさんが苦し気にそう言った。
「私はカリナさんに危ない所を救って貰いました...今でもとても感謝しております...ただ...その...なんて言いますか...それとこれとは話が別とでも言いますか...」
ステラさんが歯切れ悪く続いた。
「......」
セリカさんだけはさっきから黙って俯いたままだ。
どうやら決断の時らしい。私はフゥッと一口息を吐いてから、
「分かりました。では本日を以って我がパーティー『エリアーズ』は解散することにします。短い間でしたが、皆さんお世話になりました。まるで本物の家族になったみたいでとても楽しかったですよ? 皆さんのことは忘れません。さようなら。どうかお元気で」
そう言って亜空間へと逃げるように飛び込んだ。
だってそうしないと今にも泣き出してしまいそうだったから...
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます