第255話 対決

 地表に現れた地竜は、最初の報告にあった通りとんでもない大きさだった。


 黒光りするウロコに包まれたその巨体は、優に全長20mは楽に超えていることだろう。長く伸びた逞しい尻尾の先まで含めたら何mになることやら。


 鋭く尖った二本の大きな角が生えた頭は、体に比べたら少し小さく感じた。大きく裂けた口からは狂暴そうな牙がズラリと生えている。逞しい4本の足には頑丈そうな鉤爪が生えていて、スパイクのようにしっかりと地面を踏み締めている。


「モグラが穴から出て来やがったな! 行くぞ、てめえら! 殺っちまえ!」


『応!』


 アレックスさんの号令の元、冒険者達がそれぞれの得物を手に地竜へと襲い掛かる。なんとビックリ! アレックスさんの得物は斬馬刀だった。


 ラウムさんのバスターソードよりデカい。180を超えていそうなアレックスさんの高い身長よりも長い得物を軽々と扱っている。さすがはギルドを代表する冒険者というだけのことはある。


「魔道士隊下がれ! 重騎兵隊前へ!」


『ラジャー!』


 こちらはグレン騎士団長の命令の元、騎士団が隊列を組み替えた。魔道士隊に代わってフルアーマー部隊が前に出る。全員が盾とハルバートを装備している。


「カリナ、私も行って来る」


「ラウムさん、十分に注意して下さいね?」


「あぁ、分かってる。それじゃあ」


 そう言ってラウムさんは最前線に向かって行った。私とセリカさんは相変わらず後方待機のままだ。今のところは役に立てそうもないから。だがやるべきことはある。


「セリカさん、ラウムさんの動向から目を離さないで下さいね? ちょっとでも危なくなったら、すぐに瞬間移動してラウムさんを回収して来て下さい」


「は、はい! 分かりました!...が、本当にそれでいいんでしょうか...他の皆さんが戦っている時に...」


「構いません。この場に集まった勇者の皆さんには申し訳ないけど、私はパーティーリーダーとしてなによりもまずメンバーの命を優先します。それでエゴイストと謗られても構いません」


「...分かりました!」


 私達は戦局から片時も目を離さず見詰めていた。攻防は一進一退というところだろうか。地竜は鋭い牙と逞しい前足を使って攻撃して来る。更に時折長い尻尾を振り回したりもする。


 冒険者達も騎士団員達も地竜の攻撃を上手く躱しながら反撃しているが、硬いウロコに阻まれ中々有効打が入らない。


 相手の攻撃を躱しながらだから尚更だ。その時、偵察に出ていたステラさん達が戻って来た。


「お疲れ様です。お帰りなさい」


「ただいま戻りました。苦戦しているみたいですね」


「そうですね。あぁ、ステラさん。まだ鳥のままで居て下さい。もう一度飛んで貰うかも知れないんで」


「クエッ!」


 

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