第253話 急転直下

 ステラさんの只事じゃない様子に、バリケード作成作業中だった冒険者達と騎士団員達が何事かと一瞬作業の手を止める。


 地面に降り立ったステラさんは服を着る余裕もなくこう叫んだ。


「み、皆さん! た、大変です! ち、地竜は、地竜は土の中を潜って進んで来てます!」


 やっぱりね...なんとなくそういう予感はしてたんだ...こういった嫌な予感ってのは良く当たるもんなんだよね...当たってもちっとも嬉しくないけど...


「なぁんだとぉ!? お嬢ちゃん、それは本当か!?」


「はい! 間違いありません! ここに至るまでの街道の土がボコボコになっていましたから! その跡はゆっくりとこの場所に近付いて来ています!」


「くそぉ! それじゃあバリケードを作った意味が無ぇじゃねぇか!」


 リーダーのアレックスさんが悔しそうに叫ぶ。


「お嬢さん、それで地竜は今どの辺りを進んでいるんだ?」


 次にグレン騎士団長がステラさんに問い掛ける。


「ここから約1kmの所を真っ直ぐ進んで来てます!」


「そうか...」


 ちなみにステラさんの裸体は、私が亜空間から取り出したバスタオルでしっかりとガードしている。


 これあることをある程度予想していた私は、予めバスタオルを用意して待っていたのだ。ステラさんの裸をこんな大勢の野郎共の前に晒す訳にはいかないからね! どんな時でも乙女の恥じらいは忘れちゃいけない!


「アレックス殿、バリケードが意味を成さないなら取り払った方が良い。逆に足枷になりそうだ」


「確かにそうだな...地面を進んで来られたんじゃバリケードは役に立たねぇし、こっちの行動が制限されちまうな...だがどうする? 地面を進んで来るヤツをどうやって攻撃する?」


「そこは我が魔道士隊に任せて貰おう。土の中から引っ張り出してやる」


「なるほど。分かった。おい、野郎共! バリケードを急いで撤去すんぞ! 魔道士隊の邪魔になる!」


『応!』


「お前達も手伝え」


『ラジャー!』


 アレックスさんとグレン騎士団長がそれぞれ冒険者達と騎士団員達に指示を飛ばす。するとグレン騎士団長は次にステラさんに向かって、


「お嬢さん、名前は?」


「冒険者のステラと言います」


「ステラ嬢、君は鳥の獣人なんだな?」


「はい、そうです」


「そうか。初めて見たよ。ステラ嬢、地竜の正確な位置を知りたい。もう一度飛んで貰っていいか?」


「分かりました」


「待って下さい」


 そこへアスカさんが待ったを掛ける。


「ステラさん、私を乗せて行って下さい。魔法で合図を送れると思いますから」


「なるほど。確かにその方が良さそうですね。分かりました。乗って下さい」


「うん!? お前もしかしてアスカか!?」


「はい、アレックスさん。お久し振りですね」


 どうやらアスカさんはアレックスさんと顔馴染みらしい。さすがは古参。


「お前が一緒なら心強い。アスカ、地竜のヤツは火に弱い。見付けたら火の魔法で攻撃しろ」


「分かりました」

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