第238話 出番無し

 翌日、私やセリカさん、ナタリアさんの故郷でもある領都ベガルへの旅がスタートした。


 昨日話した通り、御者席にはラウムさんとアスカさんが乗り、鳥になったステラさんが進行方向の偵察のため飛び立った。


 馬車の座席には私とセリカさん、ナタリアさんとヒルダさんが乗っている。


「それにしてもビックリしましたよ...まさかこんな短期間で五人のパーティーになっているだなんて...」


「最初、依頼先を間違えたのかと思ったくらいですよ...」


 お二人の感想はもっともだと思った。我ながらこんな短期間でこれ程の人数になるだなんて思ってもいなかったもんね。


「まぁ、なんやかやありまして。合縁奇縁と言いますか。気が付いたらこんな人数になってました」


 私は苦笑しながらそう言った。


「そうなんですね。でもカリナさんとセリカさんが楽しそうで良かったです」


「良いご縁に恵まれたみたいですね」


 お二人にそう言って貰えたんで、私とセリカさんは顔を見合わせて笑ったのだった。


 そんな時だった。


「カリナ、敵襲だ」


「馬車を止めますね」


 御者席からラウムさんとアスカさんの緊張した声が響き、馬車がゆっくりと停車した。


「セリカさん!」


「は、はい!」


 素早くセリカさんに指示を下す。瞬間移動でナタリアさんとヒルダさんを安全な場所に避難させた。


 私も急いで馬車の外に出る。上空にはステラさんが旋回しながら飛んでいる。


「ステラから合図があった。この先に敵が待ち伏せしている」


「分かりました。依頼人は安全な場所に避難させたのでご安心を」


 そう言いながら私は、馬車と馬を亜空間に放り込んで敵襲に備えた。


「来ましたよ」


 アスカさんが囁く。やがて現れたのは、


「こりゃあ当たりだぜ! 別嬪揃いじゃねぇか!」


「てめえら、大人しくしやがれ! 良い思いさせてやんぜ!」


「身ぐるみ剥いだ後でな! ゲヒャハハハ!」


 盗賊だった。下卑た嗤いを浮かべながらゲスいことを叫んでいる。10人くらい居るだろうか。


「アスカ、撃ち漏らしを頼む」


「分かりました」


 短くそれだけを言って、ラウムさんはバスターソードを抜きながら盗賊の群れに突っ込んで行った。


「うおっ!? こ、この野郎!」


「ギャアアアッ!」


「やっちまえ! 逃がすな!」


 何人かが一瞬で弾き飛ばされて、盗賊の群れは忽ち大混乱になる。何人かは私とアスカさんの方に向かって来た。


「吹き飛べ!」


 アスカさんの風の魔法が炸裂する。


「ギャアアアッ!」


 盗賊共が吹っ飛ばされる。こんな感じで盗賊共はあっという間に壊滅した。


 ちなみに私の出番は全く無かった

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