第237話 個性的な仲間

 私が悩んでいると、アスカさんが断固とした口調でこう言い放った。


「引き受けましょう。というより、指名依頼は基本的に断っちゃダメです。ギルドに対する心証が悪くなりますし、私達のパーティーにも悪い評判が立ったりもします。お金の問題じゃないんですよ。信用はお金じゃ買えないんです。コツコツと積み上げていくことが大事なんですよ」


 なんというか、目からウロコが落ちるとはこういうことを言うんだろうか? 私はさっきまでの妙なプライドを持って発言していた自分が猛烈に恥ずかしくなった。


「ありがとうございます、アスカさん。お陰様で目が覚めました。ご指名頂いたお客様のために誠心誠意応える所存です。皆さん、それでいいですね?」


「「「 異議なし! 」」」


 こうして久し振りの護衛任務を引き受けることになった。



◇◇◇



 指名依頼を受諾した翌日、ギルド内の飲食コーナーでお二人と会うことになった。


「ナタリアさん、ヒルダさん、お久し振りです」


「カリナさん! お久し振りです!...ってなんか人増えてません!?」


「ひいふうみい...五人もいらっしゃるんですね...私達二人に対して多過ぎません!?」


「アハハ、実はあれからなんやかやかとありまして。パーティーメンバーは増えましたが依頼料は据え置きですから安心して下さいな」


「そうなんですね...」


「はい、依頼内容はここから領都ベガルへの道中の護衛ということでよろしいですか?」


「えぇ、そうです。私の母親の体調が良くなったのでそろそろ領都に戻ろうと思って冒険者ギルドに指名依頼を出しに行ったら、丁度そこでばったりヒルダさんにお会いしたんですよ」 


「私も丁度領都に戻るつもりでいましたんで、これ幸いとばかりに一緒に依頼しようと思った次第です」


 お二人が交互に説明してくれた。


「なるほど。了解しました。出発はいつになりますか?」


「明日を予定していましたが...」


 そこでお二人が顔を見合わせてしまった。


「どうされました?」


「実は四人乗りの馬車しか手配してないんです」


「あぁ、そういうことですか」


 基本、移動手段に関しては依頼主が負担することになっている。私とセリカさんがまだ二人組だと思って、四人乗りで大丈夫だとそう判断したのだろう。それは彼女達になんの非もない。


「大丈夫だ。安心してくれ。私と彼女が御者席に乗る」


 そこでラウムさんが助け船を出した。アスカさんと二人で御者を務めるという。


「私は偵察のため飛んで行きますから問題ありません」


 更にステラさんが続いた。


「えっ!? と、飛ぶ!?」


「あぁ、ステラさんは鳥の獣人なんですよ。ともあれ、これで馬車の問題は解決しましたね?」


 お二人の顔が若干強ばって見えたのは気のせいだと思いたい。

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