第236話 久し振りに

 次の日、アスカさんとラウムさん以外の面々は食い過ぎで苦しんでいた。


 もちろん私も含めて...


「うぅ...まだ胸焼けがする...」


「腹八分目という言葉は大切なんですね...」


「まだお腹がパンパンに張ってる気がします...」


「ママ~...なんかお腹痛い...」


「全くもう...あなた達、揃いも揃って情けないですよ?」


 アスカさんが完全に母親目線だ。


「人の金だと思ってガッツクからそんな目に遭うんだ。良い気味だ」


 ラウムさんは財布を覗いて渋い顔をしながらそう言った。


「そういやラウムさん、昨日は全然飲んでなかったですね?」


「お前らがあんまり食うもんだから、財布が心配になって飲む気にならんかった」


「それはそれは...失礼しました...」


 なにもそんな恨みがましい目で睨まんでも...しょうがないじゃんか...タダより安いものはないんだから...


「今日は開店休業ですね」


「そうだな。まぁそれでも一応、ギルドに行って依頼の有無を見てくることにするよ。昨日の件もギルドマスターに報告しといた方がいいだろうしな...アスカはこのアホ共の面倒を見ててやってくれ」


「分かりました」


 言うに事欠いてアホって! くっ! 言い返せない自分が悔しい...



◇◇◇



「今戻ったぞ」


 昼過ぎになってギルドに行っていたラウムさんが戻って来た。その頃になってようやく私達も昨日の暴食の影響から抜け出せていた。


「お帰りなさい。なにか良さ気な依頼とかありました?」


「指名依頼が入っていた」


「えっ!? 指名って...あぁ、護衛任務ですか?」


「あぁそうだ。連名でナタリアとヒルダって人達からだ。カリナの知り合いか?」


「はい、私とセリカさん二人の時に引き受けた依頼人です」


 私は彼女達との出会いを掻い摘んで説明した。


「なんと...そんなことが...同じ冒険者としてショックだな...」


 この話を初めて聞いたラウムさん、アスカさん、ステラさんが神妙な顔付きになった。確かに犯罪に走る冒険者が居るってことは悲しいよね...つい昨日もあったばかりなんで尚更そう思うよ...


「でも指名依頼は嬉しいんですが、ちょっと困りましたねぇ。私とセリカさん二人の時とは状況が違いますし」


「確かに。護衛される側より護衛する側の人数が多くなるって、そんなの普通は王族とか大貴族クラスの場合くらいしかないもんな」


「コストパフォーマンス的にも美味しくない仕事ですし。どうしましょうかね...」


 こんな風に悩む日が来るなんて思いもしなかったよ。あの頃は月一回仕事があれば御の字だったからねぇ。

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