第223話 治癒の魔法

「アスカさん、ベビーシッターの手配の方は如何です?」


 私は朝食後のコーヒーを飲みながらそう切り出した。


「はい、何人か面接をしてみて良さそうな人が居ましたので、その人に決めました。明日から来てくれるそうです」


「そうですか。それは良かったです。じゃあ皆さん、明日はその治癒の魔法がやって来たらルキノちゃんを任せて、久し振りに冒険者ギルドに行って仕事を見付けることにしましょうか?」


「了解です」


「いよいよ新生『エリアーズ』としての初仕事ですね!」


「あ、明日までに酒を抜いておく...」


 みんなのテンションが上がる中、約1名だけ食卓に突っ伏している人は見なかったことにする。


「アスカさん、この杖をお渡ししておきます」 


「ありがとうございます!...えっと...これは!?」


「それはダンジョンでリッチを倒した時にドロップしたアイテムです。杖の先端に付いてるドクロのせいで禍々しく見えますがギルドで鑑定して貰った結果、呪われたアイテムとかじゃないみたいなんで安心して下さい」


「な、なるほど...」


「その杖は『魔道の杖』と呼ばれていて、装備している人の魔力を高めてくれる特殊効果があるそうなんです。魔道士であるアスカさんにピッタリだと思いまして」


「そうだったんですね! ありがとうございます! 大事に使わせて貰いますね!」


「ちなみにアスカさんって、使える魔法は攻撃魔法だけですか?」


 最初に遭遇した時、火の魔法を使ってたのは覚えているんだ。


「いえ、攻撃魔法ほど得意じゃありませんが、一応治癒の魔法も使えます」


「そうですか! それは重畳です! ウチには治癒の魔法が使える者が居ませんから!」


「ありがとうございます...でもいくら治癒の魔法を使えても、娘を治してやれなかったのは悔しかったですけどね...」


「それは...仕方ないですよ...」


 怪我や火傷の治療と違って、病気の治療に関しては治癒の魔法じゃどうにもならない。病気に罹ったら医者に行くしかないのだ。


 というか、病気までも治癒の魔法で治っちゃったら医者が失業するからね。治癒の魔法で怪我を治す場合っていうのは、あくまでも医者にすぐに行けないような状況で怪我を負った緊急の時だからね。ちなみに大きな病院だと必ず治癒魔法使いが何人か常駐してたりする。ルキノちゃんが入院してた病院にも居たんじゃないかな。


 だからこそ冒険者の間では治癒魔法の使い手が重宝されるんだよ。本当にアスカさんが来てくれて良かった。つくづくそう思うよ。これでまた思いっきり冒険できそうだ。

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