第222話 新たな日常

 アスカさん達親娘が新しい我がパーティーホームに来てからというもの、私達の日常は大きな変化を迎えた。


 朝起きるとパンの焼ける香ばしい匂いや、淹れ立てのコーヒーの香り、卵をフライパンで炒めるジュージューといった食欲を唆る音などが、朝の当たり前の光景となりつつある。


「カリナお姉ちゃん、おはよ」


「ルキノちゃん、おはようございます」


「おはようございます、カリナさん。コーヒーでいいですか?」


「おはようございます、アスカさん。毎朝すいません」


「気にしないで下さい。ついでですので」


 私とセリカさんが二人暮らししていた頃、その後ステラさんが加わって三人暮らしになった頃も、誰一人として料理をする者は居なかった。


 同じ女として恥ずかしい限りだが、朝は前の日に買っておいた惣菜パンで済ませ、昼も夜も外食で済ませていた私達である。


 一番早く起きた者が三人分のコーヒーを淹れる。それぐらいがせいぜい関の山だった。だからアスカさんの女子力というか母性には感服するしかない。


 今こうして食卓に着いて、スクランブルエッグを食べながら牛乳を飲んでいるルキノちゃんを見る度につくづくそう思う。


 私も子供が出来たらこういう風になれるんだろうか?


「皆さん、おはようございます」


「ふわぁ、おはようございまふ」


「おはよ、お姉ちゃん達」


 そんなことを考えてる間に、ステラさんとセリカさんも起きて来た。


「おはようございます。お二方もコーヒーでいいですか?」


「いつもすいません。よろしくお願い致します」


「すいません、私はルキノちゃんと同じ牛乳でお願い致します」


「セリカお姉ちゃん、あたしと一緒だね!」


「そうでちゅね~♪ 一緒でちゅよ~♪」


 ちなみにルキノちゃんはすっかり私達に馴れてくれた。最初の頃は人見知りして中々心を開いてくれなかったが、なぜか一番最初にセリカさんに心を許した。そこからは徐々に私達にも慣れてくれて今に至る。


 そんなセリカさんが、すっかりルキノちゃんの可愛さにやられてしまっているのは今見た通りだ。完全に堕とされてしまっている。


「あれ? ラウムお姉ちゃんは?」


「あぁ、あの人は昨日も結構呑んでいたんで、きっとまた二日酔いでしょう。ルキノちゃん、あんな大人になってはいけませんよ?」


「うん! 分かった!」


「良い子ですね」


 結局、私達が朝食を終えた頃にやっと起き出して来たラウムさんは、


「み、水を...」


 とだけ言って食卓に倒れ込むよう座ったのだった。


 ダメな大人の見本のような姿は、ルキノちゃんには見せない方が良いとしみじみ思ったりした。

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