第210話 難儀な性格

「うぅ...頭が痛い...」


 翌日、朝になって起き出して来たラウムさんが二日酔いなのか、辛そうな顔して頭を抑えている。


 そりゃあれだけ飲めばそうなるだろう。自業自得以外の何者でもないわ。 


「ラウムさん、辛いんなら今日帰るのは延ばしますか? 馬車に乗るのもキツイでしょう?」


「うぅ...済まない...そうしてくれると助かる...」


 仕方ないので私達は、ラウムさんを宿に置いて観光にでも出掛けることにした。ここは温泉が出ることも魅力の一つだが、付近に連なる山々は景勝地としても人気が高い。


「ロープウェイが山頂まで通ってるみたいですよ? 行ってみませんか?」


 セリカさんが観光マップを見ながらそう提案して来る。 


「いいですね! 行きましょうよ!」


 私はすぐ飛び付いたのだが、なぜかステラさんの反応が鈍い。


「......」


「ステラさん? 反対ですか?」


 なんだろ? もしかして絶景とかに興味ないのかな? あぁそっか、ステラさんは空を飛べるから今更なのか。いつでも見れるからつまんないんだな。


「...い、いえその...じ、実は私...こ、高所恐怖症でして...」


「「 空を飛べるのに!? 」」


 私とセリカさんのセリフがキレイに被った。そりゃそうだろう。意外過ぎる答えだったんだから。


「...自分で飛ぶ分には怖くないんですが、ロープウェイで登るっていうのがちょっと...実はエレベーターとかエスカレーターも苦手だったりするんです...」


「つまり纏めると...自分の力以外で上に登るという行為に関して恐怖感を感じる。そういうことですか?」


「...えぇ、まぁ...」


「それはまた...難儀な性格ですね...」


「...お恥ずかしい限りです...」


 ステラさんが縮こまってしまった。


「ステラさん、苦手を克服しましょうよ。いつまでも苦手なままでいたくないでしょう? 私、協力しますから」


「私もお手伝いします」


「...カリナさん、セリカさん、ありがとうございます...私...勇気出してチャレンジしてみます...」


 私達は手を取り合ってロープウェイ乗り場に向かった。



◇◇◇



「ほら、ステラさん。ゆっくりでいいんで目を開けて見て下さいな」


「ステラさん、絶景ですよ? 怖くないですよ?」


 私とセリカさんはそれぞれステラさんと手を繋ぎながらロープウェイに乗り込んでいる。


「ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ!」


 だが私達がいくら励ましても、頑なにステラさんは目を開けようとしない。まぁそんな簡単に恐怖症は克服できないよね。


 長い目で見てやろう。


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