第191話 ダンジョン攻略32
水場を抜けると辺りが薄暗くなって来た。
「なんだか雰囲気が変わって来ましたね。重苦しいというかなんて言うか」
私がそう言うとステラさんが冷静に続けた。
「確かフロアボスの部屋がもうすぐだったと思います」
「ひえっ! そ、そうなんですか...」
「えぇ、セリカさん。魔力は満タンですよね?」
「は、はい! それは大丈夫なんですが...なんだか怖くなって来ました...」
セリカさんが既にビビり始めている。かく言う私も少し緊張して来た。
やがてダンジョンの前方に、やたらめったらデカい扉が姿を見せた。
「ふわぁ...なんてデッカい扉...」
高さ約5mはあるんじゃなかろうか? なにやら禍々しい彫刻が施された両開きの扉には小さな取っ手が付いている。
「ここがフロアボスの部屋なんですね?」
「...えぇ...そうです...」
ステラさんの声が緊張で固くなった。
「うぅ...凄い威圧感です...」
確かに。入っちゃいけないって感じがヒシヒシと伝わって来るね。
「それじゃあ行きましょうか。これって引くのかな? 押すのかな?」
私が扉の取っ手に手を掛けると、
「か、カリナさん、や、やっぱり止めませんか?」
「わ、私も賛成です...な、なんだか嫌な予感がします...」
お二人がビビり捲っている。まぁ無理もないけどね。
「大丈夫ですって。言ったでしょ? ちょっと見るだけだって。見たらすぐ、セリカさんの瞬間移動で逃げればいいじゃないですか?」
「それはそうなんですけど...」
「...カリナさん『好奇心は猫を殺す』っていう諺があるの知ってます?...」
「いえ、知りませんけど?」
なにそれ? どういう意味?
「あ、動いた。引くんですね」
私は取っ手を軽く引いた。こんなにデカい扉なのに私の力でもスンナリと動く。
「「 ヽ(ヽ゜ロ゜)ヒイィィィ! 」」
お二人が抱き合って震えている。そんな大袈裟な。まだ中に入ってもいないのに。
「うわぁ、中は真っ暗ですよ~」
ちょっと開いた扉の隙間から部屋の中を覗き込んでみた。真っ暗で何も見えない。
「松明が必要ですね」
私は亜空間から松明を取り出した。
「さぁ、中に入りますよ?」
震えているお二人を促す。
「「 か、カリナさん、お先に... 」」
「はいはい、ちゃんと付いて来て下さいね?」
私を一人にしないでね?
私達がフロアボスの部屋に足を一歩踏み入れると、音も無くゆっくりと扉が閉まった。すると今まで真っ暗だった部屋に、両サイドの壁の上の方にある蝋燭の明かりが点々と灯って行き、段々と奥の方の様子が見えるようになって行った。
部屋の中は奥行き約50mくらい。幅は約30mくらいはありそうな巨大な空間だった。
部屋の一番奥には祭壇らしき物が鎮座している。
やがて部屋全体が小刻みに揺れ出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます