第189話 ダンジョン攻略30
「なんでしょうか!? 誰か歌ってるんですかね!?」
「あの歌声は...皆さん! 耳を塞いで下さい! あれはセイレーンの歌声です! 聞いた者を魅了し意のままに操る力があると言われています! 歌声に耳を傾けてはなりません!」
そう叫んでステラさんは慌てて自分の耳を塞いだ。セリカさんもそれに続くが私はと言えば、
「落ち着いて下さい。この亜空間はあらゆる魔力を遮断していますから、そんな精神感応系の魔法も効果ありませんよ? ほら、なんともないでしょう? 私にはただの澄んだ歌声にしか聞こえませんよ?」
そう言って両手を広げた。するとお二人も恐る恐ると言った感じで耳から手を放した。
「ほ、本当だ...なんともない...」
「キレイな歌声ですね...」
「でしょう? ここに居る限り、状態異常系や精神感応系の魔法や特殊効果は効かないから安心して下さいね?」
というより、今は外の状況を良く知りたいから音を拾ってるだけで、普段は外の音を遮断しているからね。本来ならセイレーンの歌声も聞こえなかったはずなんだよ。
「カリナさん、凄いです...」
「実はカリナさん、最強なんじゃ...」
「ヤダなぁ~ それは言い過ぎですよぉ~」
なんだか照れちゃうね。
「ところでそのセイレーンでしたっけ? どこで歌ってるんでしょうかね?」
「あ、あそこですね。ほら、池だか沼だかの真ん中辺り。浮島みたいになってる所に居ますよ」
セリカさんの指差す方に目を向けると確かに居た。サハギンが半魚人だとしたら、こちらは逆に人魚のような姿をした魔物が歌を口遊んでいる。
長い黒髪で上半身が人間の裸の女だからちょっとエロい。対して下半身はまるっきり魚だ。その姿はまさしく伝説の人魚そのものだった。
「あれは簡単に倒せそうですね」
そう言って私は亜空間を移動し、セイレーンの真上に達した。ここから黒い剣を落として仕留める。精神感応系の魔法に掛からないように、極力亜空間からは出ない。
「狙いを定めてと...エイッ!」
狙いは寸分違わず、黒い剣はセイレーンを貫いた。途端に歌声も止む。
「良し、終了。呆気なかったですね」
私は亜空間から出て黒い剣を回収しようとした。その時だった。
バシャッバシャッ!
四方八方から水が飛んで来て、私はあっという間にずぶ濡れになった。
「うわっぷっ! な、なに!? なにが起こったの!?」
私は慌てて亜空間に避難した。
「見て下さい! あれ!」
ステラさんが指差す方を見ると、水の中から沢山のサハギンが顔を出して口から水を吹いている。
「なにあれ!? 水鉄砲!?」
私は濡れた服を着替えて髪をタオルで拭きながらそう言った。
「なんだかセイレーンを倒されて怒ってるみたいな感じがしますね」
なるほど。サハギンはセイレーンに魅了されていたってことか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます