第188話 ダンジョン攻略29

「あのですねカリナさん、フロアボスの部屋は普通の部屋とは違うんです。いったん入ったら扉が閉まって、フロアボスを倒さない限りその扉は開かないんですよ?」


「へぇ~ そうなんですね~」


 なんだか大変そうだね~


「いや、そうなんですねじゃなくて...我々も中に入ったら出られないんですよ?」


「ステラさん、お忘れですか? 我々には覚醒したセリカさんが居ることを」


 そう言って私はセリカさんの肩を抱いた。


「セリカさんが居れば、我々はどんな場所からでも瞬間移動できるんですよ?」


「...その代わり私の魔力はすっからかんになりますけどね...」


 セリカさんがブツブツ文句言ってるのを華麗にスルーする。


「あ、そうでした...確かにそれならちょっと覗くだけってのも可能ですね」


 まだ言わないけど、覗くだけで終わらせるつもりは無いんだよね。これはフロアボスがでっかいモグラだって聞いた時から考えていたんだ。もしかしたらウチらなら簡単に倒せるかも知れないってね。


「てな訳で行きましょうか」


 私達はいよいよ10階層目に突入した。



◇◇◇



「な~んも出て来ないですね~」


 10階層目に入ってしばらく経つが、魔物は一向に現れる様子がない。それでも一応の用心のため、ずっと亜空間を進んでいる訳だが。


「ステラさん、以前もこうでした?」


「いえ、以前はそれこそ9階層目に出て来たサラマンダーとか、吸血系の魔物とかがワンサカ出て来て、フロアボスの部屋に着いた時にはヘトヘトになっていた記憶があります」


「なるほど。良く分からないけど、取り敢えず先に進みますか」


 やがて前方に池? 沼? とにかく水場が現れた。


「へぇ~ ダンジョンの中にも水場があるんですね~」


 初めて知ったよ。


「いえ...私も初めて見ます...以前来た時はこんな場所なかったです...」


 ありゃ? ステラさんも初めてなんだ? じゃあここはなんかありそうだね。水場に近付いてそう思っていた時だった。


「グギャッ!」


 そんな変な声と共になにやら見たこと無い魔物が水の中から現れた。半魚人とでも言えば良いんだろうか。魚の上半身に人間の下半身。手には三ツ又の槍を持っている。


「あれはなんでしょうか? 半魚人?」


「恐らくサハギンだと思います。私も初めて見ました」


「なんだか気持ち悪いですね...」


 確かに。水場に近付いていきなりあんなのが出て来たらビビるよね。


「どうしましょうか? スルーします? 戦ってみます?」


「う~ん...この池だか沼だかが、どれだけ深いのか分かりませんし、迂闊に近付いて水の中に引き込まれたりでもされたら怖いですね...」


「じゃあスルーの方向で」


 そう結論が出た時だった。どこら辺りからか、なにやら歌声のようなものが聞こえて来た。

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