第185話 ダンジョン攻略26
「ハァッ!」
鋭い牙の攻撃を間一髪躱したステラさんが、黒マントをカウンターで一発殴り飛ばした。
「グギャッ!」
黒マントが慌てて距離を取る。
「ステラさん! 大丈夫ですか!? そいつスピードが半端ないですよ!?」
私は心配になってステラさんに問い掛ける。もちろんいつでもステラさんを亜空間に引き込む準備は万端だ。
「えぇ、なんとか。最初は面食らいましたけど、一度見たんで次は大丈夫だと思います」
「す、ステラさん...気を付けて下さいね...あの黒マント、ステラさんの首元に噛み付こうとしてましたから...」
「セリカさん、そうだったんですか?」
「えぇ、まるでステラさんの血を吸おうとしたみたいな...」
私は改めて黒マントをしっかり観察する。なるほど、あの長い牙はそのためか。鋭く尖った耳が鬼の角みたいだな。
「吸血する鬼...さしづめ吸血鬼ってところですか...」
「カリナさん、言い得て妙ですね...」
私達がそんな会話を交わしている間にも、黒マント改め吸血鬼は間合いを詰めようとステラさんの隙を伺っている。
「ガァァァッ!」
いきなり吸血鬼がマントを広げて飛び上がって来た。ステラさんに覆い被さるように襲い掛かかる。
「ステラさん!」
いきなりのことだったので私の反応が遅れた。ステラさんを亜空間に引き込めなかった。だがステラさんは、
「トリャアッ!」
自分から後ろに飛んで吸血鬼の攻撃を躱しながら、足で吸血鬼を蹴り飛ばした。
「グギャッ!」
壁に叩き付きられた吸血鬼が呻き声を上げる。だが何事もなかったかのように立ち上がって来た。
「...結構良い一撃を入れたつもりだったんですが...あれで簡単に立ち上がられるとなると...さすがにちょっとショックですね...」
どうやらかなりタフな相手らしい。
「ステラさん、無理しないで下さいね?」
「分かってます。でも、もう少しだけやらせて下さい」
「...分かりました...」
ステラさんの意地もあるだろうから、ここはその気持ちを汲んであげようと思った。
「ガァァァッ!」
もう一度吸血鬼が突っ込んで来る。
「セイヤァ!」
ステラさんが裂帛の気合いを込めて迎え撃つ。渾身の打撃が吸血鬼に炸裂する。吸血鬼は壁まで吹っ飛んでそのまま崩れ落ちた。今度は立ち上がって来ない。
「ハァ...ハァ...やった...」
ステラさんが吸血鬼に近付こうとする。だが嫌な予感がした私は、物も言わせずステラさんを亜空間に引っ張り込んだ。
「カリナさん!?」
ステラさんがビックリした声を上げるのと、
「ガァァァッ!」
吸血鬼が立ち上がって来たのはほぼ同時だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます