第178話 ダンジョン攻略19

 私とステラさんが左右からリッチに襲い掛かる。


 その前にセリカさんは瞬間移動で逃げている。


「エイッ!」「ヤァッ!」


 私とステラさんがリッチに肉薄する。リッチはどちらに対応するのか迷っているのか反応が鈍い。


 貰った!


 そう思った瞬間だった。


「ウギャッ!」「アガァッ!」


 私とステラさんは地面に這っていた。


 な、なんだこれは!? か、体が痺れて動かない! 見るとリッチの体からスパークのようなものが吹き出している。


 電気!? 雷!? とにかくリッチの魔法でやられたのは間違いない。


「ぐっ! す、ステラさん...」


 なんとか声を発するが、私よりもリッチの近くに肉薄していたステラさんは気を失っているようだ。


 私も段々と目の前が暗くなって来た。霞む目の中に杖を掲げるリッチの姿と、リッチの元へと向かって来るアンデッド軍団の姿が映った。


 あぁ、私はここで死ぬんだ...


 そう思うと今までの思い出が頭の中を駆け巡った。


 これが走馬灯か...


 私は目を閉じる前に、今まで出会った全ての人に向かって「ありがとう」と呟いていた。


 それとせめてセリカさんだけでも助けられて良かったと思っていた。


 セリカさん...ゴメンね...私達の分まで強く生きて...


「カリナさん!!」


 闇に呑み込まれそうになった私の意識が、既の所で引き戻された。


 あれ!? なんでこんな近くにセリカさんが居るんだ!? 全く回らない頭でそんなことを考えていると、


「カリナさん、しっかり! 今助けますからね!」


 そう言ってカリナさんは私を担ぐと、倒れて意識を失っているステラさんの所に瞬間移動した。


「ステラさんもしっかり!」


 まさかセリカさん、私とステラさん二人一緒に瞬間移動しようとしている!? 


 む、無理だ! 私一人連れただけで息を切らしていたじゃないか!


 私は抗議しようとしたが、声を出すことが出来ない。しかもその間にもリッチは次の魔法を唱える構えだし、アンデッド軍団は更に肉薄して来る。


「行きますよ!」


 そう言ってセリカさんが瞬間移動したのは、本当にギリギリのタイミングだった。


「ハァ...ハァ...ハァ...な、なんとか...と、飛べた...」


 セリカさん! 凄い! 大した距離じゃないけど、私とステラさん二人を連れて瞬間移動に成功したんだ!


 だがまだ喜んでる場合じゃない。


 逃げられたと見たリッチとアンデッド軍団が、再び私達を補足して近付いて来る。


 私はまだ痺れている両手を無理矢理動かしてセリカさんとステラさんに触れる。あそこまでセリカさんが根性見せてくれたんだから、私も負けてられないからね!


 全員を亜空間に避難させて安心した私は、その後すぐに意識を失った。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る