第175話 ダンジョン攻略16

 グールは頭に二本の角が生えた鬼だった。


 体格は大人の男の人くらい。がっしりと筋肉質な体付きに鋭い牙。長く伸びた爪は凶悪そうに鋭く尖っている。


「グオッ!」


 グールが範囲の輪を狭め一斉に襲い掛かって来た。


「ステラさん! セリカさん!」


 私はまず安全第一ということで、お二人を亜空間に放り込んだ。そして黒い剣を一閃する。


「セイヤァッ!」 


 円を描くように振り回した黒い剣は、群がるグールどもを一刀両断した。


 後にはグールの亡骸が散らばっていた。


「す、凄いです...カリナさん...」


「魔物がキレイに真っ二つですね...」


「私も自分でやっててビックリしてます...」


 ここまで上手く行くとは思ってなかったからね。何匹かは打ち漏らすと思ってた。そうしたら私もすぐ亜空間に避難するつもりだったんだけど、その必要はなかったみたいだね。


「このグールも消滅はしないみたいですが、どうします? これって解体するの勇気要りません?」


「えっ!? どうしてですか!?」


「だってその...人間みたいじゃないですか...」


 そう、姿形はほとんど人間だもんね。さすがに抵抗あるんじゃないかなって思ってそう言ったんだけど...


「そんなこと気にしませんよ~! 魔物は魔物です~!」


 そう言ってセリカさんはさっさと解体を始めている。なんか気を遣った私がバカみたいだ。ステラさんも黙々と解体を手伝っている。ホントお二人とも逞しいね。私にゃ絶対無理!


「うん!? これは!?」


「ステラさん、どうしました!?」


「セリカさん、グールの角と牙と爪も取っておいて下さい。どうやらドロップアイテムのようです」


「そうなんですか?」


「えぇ、見て下さい。ほら、ダンジョンの中に吸収されないでしょう?」


「ホントだ。他の部分は解体が終わって肉片になると、すぐダンジョンに吸収されるのに」


「これがドロップアイテムの特徴です。全てのグールから角と牙と爪を採取しましょう」


「分かりました! 腕が鳴りますね!」


 そんな会話を嬉々として続けるお二人に背を向けて、私は只管早く終わらないかと周りを警戒する振りをしている。いや実際に警戒もしているんだけどね。


「終わりました~! 魔石にドロップアイテム大量GETです~!」


「お疲れ様でした...」


 返り血を浴び全身真っ赤になって満足そうなセリカさんに濡れタオルを渡す。ステラさんはセリカさん程じゃないけど、返り血で汚れてはいるので同じように濡れタオルを渡す。


「ここまでは順調ですね...」


 ステラさんが意味有り気にそう言った。


「ここから先、厄介になりそうなんですか?」


「えぇ、ここからは魔法を使う魔物が出て来ます...」


 ステラさんが重々しくそう言った。

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