第166話 ダンジョン攻略7

「うわぁ、本当に頭が牛なんですねぇ」


 今、私達は亜空間に居る。目の前には牛頭人身の怪物ミノタウロスが群れを作っている。身の丈は2mくらい。筋骨隆々とした上半身。手にはやたら大きな斧を構えている。あんな斧でやられたら一溜りもないな。


「強そうでしょう?」


「確かに。正面からは戦いたくない相手ですね」


 取り敢えず、いつも通り後ろに回って攻撃してみるか。


「群れから外れた所に居る一頭を狙ってみます」


 私は亜空間からミノタウロス後ろに回って、首の後ろにレイピアを突き立ててみる。


 ガキンッ!


 うん、思った通りレイピアは分厚い筋肉の壁に阻まれて全く刺さらない。


「グモゥッ!」


 ミノタウロスに気付かれた。私は急いで亜空間に避難する。


「全く歯が立ちませんね」


「群れ全体が警戒するようになっちゃいましたね」


 ステラさんが言う通り、ミノタウロスの群れが一塊になって敵に備えているようだ。マズったかな。迂闊に攻撃するべきじゃなかったかも。隙が無いな。


「やっぱり引き返しませんか...」


 セリカさんがそう提案して来た。それが良いかも知れないな。そもそも私達は魔物退治に特化したパートナーじゃないんだから。

 

「ちょっとだけ待って貰えませんか?」


「ステラさん? なにか打つ手がありそうですか?」


「いえ、すいません。そういう訳じゃないんですが、一度だけ一対一で戦ってみたいなと思いまして」


「あぁ、そういう意味ですか」


 さすがは脳筋。


「でもあれだけ群れで固まっていたら難しいですよね...」


「う~ん、それならなんとかなるかも知れませんよ?」


「本当ですか!?」


「えぇ、見かけはアレですけど本質は牛なんですよね? だったら赤い布があればなんとかなるかも知れません」


「赤い布ですか!?」


「ヒラヒラした物ならなんでも良いんです。お二方、赤い服を持ってたりしませんか?」


「あ、私持ってます。赤いスカートですが」


「セリカさん、ちょっと貸して下さい」


「はい、どうぞ。でもこんな物どうするんですか?」


「こうするんです」


 私はスカートを片手にミノタウロスの群れの前に立った。


「お牛ちゃ~ん♪ ほらほら~♪ 赤い布でちゅよ~♪」


 そう言ってスカートをヒラヒラさせる。


「グモゥッ!」


 ミノタウロスの群れが動揺した。その内の一頭が私に向かって来る。それをヒラリと躱して亜空間に避難する。


 それを何度か繰り返していたら、ミノタウロスの群れはバラバラになった。


「ステラさん、そろそろ良さそうですよ?」


 そう言って私はステラさんを亜空間から出した。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る