第141話 助けた人は2

 現場に到着した私は困惑していた。


 ゴブリンの群れに包囲されていたのは旅行者じゃなかった。というより人ではなかった。


「なんだあれ!? 鳥!? それにしちゃデカくない!?」


 大型の鷲より遥かにデカい。魔物なのかな!? 魔物同士の争いってこと!? だったら放っておくんだけど、なんだろう? なんか気になるんだよね。


 その時だった。鳥!? と目が合った気がした。


「クエェェェッ!」


 そんな訳無いって分かってるんだけど「助けて!」って、そう聞こえた気がしたんだ。気が付いたら私の体は動いていた。


 亜空間に潜ってゴブリンを次々に始末して行く。その時に気付いたんだけど、普通のゴブリンの中に弓矢を持ってるヤツや、魔道士みたいに杖を持っているヤツが居た。


 確かゴブリンアーチャーにゴブリンメイジだったかな? ゴブリンの上位種が混じっていた。


 ゴブリンの群れを片付けて、鳥!? の元に向かった。手負いになってるんでいきなり襲って来るかも? と警戒しながら近寄ってみると、


「うん!? 気絶してる!?」


 木に凭れ掛かって目を閉じてる。間違いなく気を失ってるね。改めてその姿を良く観察してみる、


 体は黒い毛に覆われている。頭の部分だけに白い毛が生えている。体長は翼を広げたら5mくらいありそうだ。人を2、3人乗せられるんじゃないかと思うくらいデカい。

 

 体のあちこちに矢が刺さっており、血も結構流れている。かなり辛そうだ。


「さて、どうしたもんかな...」


 私が扱いに困っていると、鳥!? の体が白く輝き始めた。


「うぉっ!? な、何事!?」


 眩しくて思わず私は目を閉じた。光が収まったんでゆっくり目を開けてみると、


「えぇっ!? う、ウソでしょ!?」


 そこには若い女の人が、一糸纏わぬ姿で横たわっていたのだった。



◇◇◇



「え~と...情報を整理しよう...さっきまでここには怪我をしたデカい鳥が居て、それが急に光ったと思ったら全裸美女になりましたと...なんじゃあそれ!?」


 自分で自分に突っ込みを入れてしまった。それくらい混乱してるってことだ。


「うぅん...」


 女の人が苦し気に呻いた。サイズが小さくなったからか、刺さっていた矢は抜けたみたいだけど、手足からはまだ出血してる。


 この人の正体は後回しで、まずは治療に専念することにする。私は亜空間から血止め薬を取り出して傷口に掛ける。幸い傷はそんなに深く無いみたいだ。


 傷口に包帯を巻いて取り敢えず応急処置終了。後はこの人を亜空間に収納してセリカさん達の所に戻るだけ。


 遅くなったからさぞ心配してることだろう。早く戻らないと。


 この人のことを報告したらビックリするだろうな。

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