第138話 指名依頼

 翌日、私達がいつものように冒険者ギルドに行くと、受付嬢さんに呼び止められた。


「えっ!? 指名依頼ですか!?」


「はい、そうなんです。冒険者のカリナさん宛に指名が入っているんです」


 指名依頼とは読んで字の如く、特定の冒険者やパーティーを名指ししての依頼が入ることである。名を上げた冒険者に良くあることなので、一種のステータスのようなものでもある。


 先日から功績を上げている我々『エリアーズ』もいよいよその仲間入りを果たしたのかと思ったら、どうやら違ったようだ。私個人宛ということは、以前仕事をした人からの依頼だろうか?


「依頼主はどなたですか?」


「え~と、お二方の連名になっていますね。マリス・オコネル様とクリス・エバートン様です」


 あぁ、やっぱりね。あのお二方だったか。だけど連名ってどういうことだろう? 


「それで依頼の内容は?」


「旧ベルトラン領の領都ベガルから王都までの護衛依頼になりますね」


 なるほど、そういうことか。なぜかお二方ともに王都まで行く用事があって、その護衛に私を指名したって訳ね。


「分かりました。お受けします。ただし、私個人ではなく『エリアーズ』として受けるとお伝え下さい」


「了解しました。ではベガルまでの移動をお願いします」


 指名依頼は余程の事情が無い限り断ってはいけないものらしい。私個人宛に来た依頼だけど、二人で受けたって問題無いよね。


「カリナさん、お知り合いなんですか?」


「えぇ、お二方とも私がまだソロの頃に護衛をした方なんです。ただ連名で依頼を出すほど仲良しだったとは思いませんでした」


 最後にお会いした時は、逆になんか険悪な雰囲気だったような記憶があるんだけどな...確かちょうどクリス様の依頼が片付いた時に、偶然ギルドでマリス様と鉢合わせしたんだったよね。


「と言うと、以前は別々の護衛依頼だったってことですか?」


「えぇ、そうなんです」


「ふうん、良く分かりませんが、取り敢えず移動しましょうか? 直接聞いてみれば分かるでしょう」


「そうですね」


 こうして私達はベガルまで移動することになった。



◇◇◇



 ベガルに着いて冒険者ギルドに入った途端、


「カリナさ~ん! 会いたかった~!」


「わぷっ!?」


「ちょっとマリス様! 抜け駆けはズルいです! エイッ!」


「むぎゅっ!?」


 今、私はなぜかマリス様とクリス様に抱き付かれて、サンドイッチの具状態になってる訳なんだが...セリカさん、呆気に取られてないで助けてよ...苦しいんだけど...

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る