第136話 感謝

 テントを張り終わり、火を焚いて食事にしようとしている時だった。


「おい! 誰か来るぞ!」


 見張りをしていたマックスが叫ぶ。私達は警戒して一ヶ所に固まった。やがて複数の蹄の音と共に現れたのは、


「止まれ! おや? 君達は?」


「あ、どうも...お疲れ様です...」


 ギルドマスターだった。後ろにかなりの人数の冒険者を引き連れている。中には騎士団の騎士服を着ている人も混じっている。暗い中、危険を冒してまで急いで駆け付けてくれたらしい。


「こんな所で何をしてるんだ!? 危険だって言っただろう!?」


「え~と...実はですね...」


 外に出ないで大人しくしているようにって言われたのに、それを破っちゃって心苦しく思いながらも、事ここに至った経緯を説明した。


「なんと!? 君がスタンピードを未然に防いだと言うのか!? とても信じられん...とにかく見に行ってみよう。一緒に来てくれるか?」


 だよねぇ...誰も信じられないよねぇ...


「分かりました」


 一緒にダンジョンまで行って検証して貰うことにした。その結果、


「確かに魔物の気配は無いな。スタンピードの予兆も感じられない」 


 どうやらお墨付きを貰えたらしい。


「それで!? どうやって魔物の群れを倒したのか、実際に見せて貰ってもいいか!?」


「あ、はい。じゃあ行きます」


 そう言って私は亜空間に潜り込んだ。一瞬で私の姿が消えたので、ギルドマスター達がビックリしている。


 私はやや離れた所まで移動して、


「ここですよ~」


 と手を振った。


「なんと!? もしかして君は空間魔法使いなのか!?」


「あ、はい。そうなんです」


「なるほど! そうやって魔物の群れを誘導したんだな! それで合点が行った!」


「えぇ、こうやって群れの先頭を誘導すれば、後は勝手に崖下へと落ちて行ってくれました」


 私は断崖絶壁の所まで移動してそう言った。


「いやぁ、素晴らしい作戦だ! 感心したよ! 良く思い付いたもんだ!」


「ありがとうございます。もっとも崖下は滝壺になってるんで、魔物の安否までは確認できませんが」


「いやいや、それは大丈夫。よっぽど頑丈な魔物でも、この高さから落ちたら無事じゃ済まない。スタンピードの危険は回避されたと言っていい。ありがとう! 良くやってくれた!」


「いえいえ、仲間を助けようとしただけですから」


 成り行きでスタンピードを止めることになっちゃったけど、本来ならセリカさんの昔の仲間を助けに来ただけだもんね。


 まぁでも、こうやって感謝されるのは良い気分だね。

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