第133話 救出
適度に休憩を挟んで移動を続けた結果、暗くなる前にダンジョンに到着した。
馬を飛ばすよりよっぽど速かったと思う。魔力を使い過ぎたセリカさんは干物のようになっちゃったけど。うん、良く頑張った。
「セリカさん、お疲れ様。ゆっくり休んで下さいね?」
「......」
返事が無い。生きる屍のようだ。セリカさんを亜空間に放り込んでから、私は改めてダンジョンの入口に目をやった。
そこはかなり急な山の斜面の中程にポッカリ口を開けており、登山道をちょっとでも外れると断崖絶壁から真っ逆さまに落ちるという、とても危険な場所にあった。
ちなみに落ちた先は滝壺になっているので、ここから落ちたらまず命は無いだろう。
まだスタンピードは本格的に始まってはいないようで、ダンジョンの入口付近は静かなもんだった。
私はゆっくりとダンジョンの中に足を踏み入れた。
◇◇◇
ダンジョンの中は真っ暗闇ではなかった。壁や天井が仄かに光っている。これが魔力によるものなのかどうか知らないが、私にとっては有り難かった。
道は結構広かった。横に5人くらい並んで歩ける程だ。その道をどんどん奥に進んで行く。今の所、魔物の姿は見掛けない。
やがて少し広い空間に辿り着いた。その時だった。
「うわあああっ! た、助けてくれえええっ!」
そんな叫び声が聞こえて来た。私は急いで声がした方に駆け付ける。
「あれは!?」
見覚えがある。セリカさんの昔の仲間『ペガサスの翼』の面々だ。魔物の群れに囲まれている。ブラッディウルフやオークなどが群れを作っているようだ。
彼らは必死に魔物を追い払おうとしているが、仲間の何人かが怪我でもしているのか動けないようだ。それを庇いながら戦っているから、今にも魔物の群れに呑み込まれてしまいそうだ。
私は亜空間に潜り込んで彼らの元に急ぎ、片っ端から亜空間に放り込んだ。
「大丈夫ですか?」
「へっ!? あ、あれ!? こ、ここは!? あ、あんたは!?」
こいつは確かパーティーリーダーだったな。マックスとか言ったか。
「私は冒険者のカリナ。あなた達を助けに来ました。ここは私が作り出した亜空間の中です」
「た、助けに!? ど、どうして俺達を!?」
「セリカさんが心配していたからです」
「せ、セリカが!?」
「えぇ、ちょっと待って下さい」
私はセリカさんを放り込んだ亜空間と繋げた。
「セリカさん、起きて下さい。昔の仲間を助けましたよ?」
「ふぇ...カリナしゃん...」
まだ魔力が回復してないようだ。朦朧としている。
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