第120話 アジト

 誘拐団のアジトは割と近くにあった。


 そこはちょっとした洞窟になっている場所だった。そこには頭目と思われる男と幹部らしき男達が二人居た。こちらも目出し帽を被っていて人相が分からない。


「そっちも上手く行ったようだな?」


「あぁ、だが御者を逃がしちまったんで、今探してる所だ。そっちは問題無しか?」


「あぁ、この通りだ。見ろ」


 男が洞窟の奥を指差すので私も釣られて見てみた。すると大型の動物を入れるような大きな檻があった。そしてその中に怯えた表情を浮かべている女性が一人居た。どうやらこの人も拐われて来たらしい。


 ということは、コイツらは二手に分かれて仕事をしていたと。悪党にしては珍しいな。それに頭目だと思っていた男とコイツのやり取りも、上司と部下というよりは仲間同士のような感じが...


「おら! 大人しくここに入ってろ!」


 私を拐って来た男が檻を開けてそう促す。色々腑に落ちないところはあるが、まぁいいか。そろそろ潮時だろう。私は亜空間に潜り込んだ。


「なぁっ!? き、消えた!?」


 さすがに檻に入れられたら、私の能力じゃ外に出れないからね。壁抜けなんて器用な真似は出来ない。空間が繋がってないと移動出来ないんだよ。


 まずは私の姿を見失って混乱している男をサクッと始末した。


「どうした!? 何があった!?」


 異常を察知した残り三人が近寄って来た。まず一人をバインドロープで拘束する。頭目だと思った男だ。


「な、なんじゃあこりゃあ!?」


 叫ぶ男を無視して、残った二人をサクッと始末した。

 

「大丈夫ですか?」


 私は囚われていた女性に声を掛ける。見た所、ナタリアさんと同じくらいの歳の人だと思った。


「は、はい。あなたは?」


「誘拐団を壊滅させるために来た冒険者です。立てますか? 怪我してませんか?」


「大丈夫です。あの、助けて頂いてありがとうございます」


「私は冒険者のカリナと言います。お名前を伺っても?」


「商家の娘でヒルダと言います」


 やっぱり商家の娘さんか。


「連れの方はどうなりました?」


「それが...護衛に雇った冒険者含め全員が...」


 ヒルダさんはそこまで言った所で涙ぐんでしまった。


「分かりました。すぐにここを出ましょう。その前に」


 私は拘束した男にレイピアを向けて、


「残りの仲間はあと何人ですか?」


 と、尋問した。


「......」


 黙りを決め込むので、レイピアを足にちょっとだけ刺した。


「ぐわぁぁぁっ! 言う! 言うから勘弁してくれ! 残りは一人だけだ!」


 最初っから大人しく吐けばいいのに。手間掛けさせんなよ。


「仲間との連絡手段は?」


「...信号弾を打ち上げることになってる...」


 男の視線を追うと洞窟の奥に信号銃があった。こりゃあいい。セリカさんに対する合図にもなりそうだ。


 私は洞窟の外に出て信号弾を打ち上げた。

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