第111話 追放された少女

 結局あの後、クリス様に「ご家族と恋人さんがお待ちでしょ?」って言ったら、物凄く辛そうな顔をして私の腕を離してくれたんだけど何故? 


 その際、クリス様は涙目になって「またお会い出来ますよね?」って頬を赤らめていたのは何故? そういう顔は私じゃなくて恋人さんに見せてあげなよ。きっと喜ぶから。


 そしてマリス様は勝ち誇ったような顔をしてたのは何故? しかもその後、マリス様とは一緒に食事をしに行ったんだけど、正面じゃなくて私の隣に座ったのは何故?


 ちょっとくっ付き過ぎじゃない? この近さはまるで恋人同士の距離感じゃない? っていうくらいベタベタして来たのは何故?


 疑問符だらけなんだけど...別れ際、マリス様が次に会う約束を求めて来たんだけど、なんだか怖くなって仕事を理由にやんわりと断った私は悪くないと思う。


 マリス様はこの世の終わりみたいな顔をするから、仕方なく当分はこの町に居るって言ったら、今度は花が咲くような笑顔になったんだけど...いやホントに何故?



◇◇◇


 

 そんなこんなで次の日、私はまた冒険者ギルドに足を運んだ。本当は少し休もうかなって思ってたんだけど、昨日マリス様にああ言っちゃった手前、少しは仕事してる風を装おっておかないとね。


 早速依頼ボードを見に行こうとした時だった。


「うるせぇな! だからてめぇはもう用済みだって言ってんだろ! とっとと失せやがれ!」


 そんな怒鳴り声が聞こえた。見ると男女の冒険者パーティーらしき連中が、一人の女の子の周りを囲んでいる。なんだろう!? 仲間割れかなんかなのかな!?


「そ、そんなっ! ひ、酷いです! わ、私のどこがいけないって言うんですか!?」


「てめぇみたいになぁ、魔物を一人で倒せねぇようなボンクラは、俺達のパーティーにゃ要らねぇって言ってんだよ! てめぇは荷物持ちにしかならねぇじゃねぇか! あぁん!?」


 パーティーリーダーらしき男の言葉に仲間達も「そうだそうだ!」「この役立たずめ!」と囃し立てている。他人事ながら見ていた私は気分が悪くなった。


「そ、それでも! わ、私は皆さんのお役に」


「だ~か~ら~あ、それもこの重力魔法使いのベスが居れば必要ねぇんだって言ってんだろ! とにかくてめぇはもうクビだ! 二度と俺達に関わるんじゃねぇぞ!」


「そ、そんなぁ~...」


 リーダーらしき男は言うだけ言って仲間と共にさっさと行ってしまった。後には涙を流して座り込んでいる女の子だけが残された。


 居たたまれなくなった私は、


「あの...大丈夫ですか!?」


 と、女の子に声を掛けていた。

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