第107話 護衛就任

 私はセバスチャンと呼ばれた男が掴み掛かってくる直前に亜空間へと避難した。


「なっ!? き、消えたっ!?」


 呆然としているセバスチャンの背後に回ってレイピアを首元へ突き付ける。


「い、いつの間に後ろにっ!?」


 セバスチャンがビックリして目を剥く。


「素晴らしいわ! あなた!」


 イレーナが称賛する。どうやら合格したようだ。


「これで雇って頂けますか?」


「えぇ、えぇ、もちろんよ! 歓迎するわ!」


「ありがとうございます」


 良し良し。まずは第一段階クリアだね。


「ねぇねぇ! 今のどうやったの!? 魔法!? 魔法なの!?」


「詳細は企業秘密になりますのでお話し出来ませんが、イレーナ様のお命を全力でお守り致します」


「まぁまぁ! なんて殊勝な心掛けなんでしょう! 良くてよ! 良くてよ! あなた気に入ったわ!」


 イレーナに気に入られたようだ。良し良し。今んとこ順調。



◇◇◇



 その後、すぐにイレーナ付きになった私は、イレーナの私室に足を踏み入れた...のだが...もうね...こんなもんどこで見付けて来たんだ? っていうくらい机も椅子も金ピカな訳よ...


 自分で志願しといてなんだけど、速攻帰りたくなったね...もしくはさっさと任務を終わらせてとっとと帰りたい...主に私の視覚を守るという意味でも...


 お前ら、良く平気で居られるよな...目が痛くならないのかよ...私は部屋の中に居る執事や侍女に尊敬の眼差しを向けた。


「実は今までにもね、女の護衛が私に売り込みに来たことがあったのよ。ほら、女じゃないと入れない場所とかあるでしょう? そんな時に女の護衛が居たら便利だと思ったんだけど、今まで一人もセバスチャンに勝てるような女は居なかったのよ。そんな弱い護衛を採用する訳にはいかなくてね。セバスチャンに勝てたのはあなたが初めてだわ。だからあなたには期待してるのよ」 


「期待を裏切らないよう微力を尽くします」 


 良し良し。上手い具合に懐に入り込めたみたいだね。


「ところであなた、イアン様の紹介状を持って来たけど、イアン様とはどういう関係なのかしら!?」


 イレーナの目が怪しく光った。私とイアン様との仲を疑ってるらしい。これは返答を間違えたらヤバいパターンだな。さて、どうするか...


「たまたまなんですが、イアン様の窮地を救ったことがございまして。それ依頼、ご指名頂ける機会が何度かあったという関係になります」


「ふうん、あくまでもビジネスライクな関係って訳ね?」


「仰る通りでございます」


 そこが気になっていたのね。どうやら納得してくれたようで一安心かな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る