第103話 明かされた真相

「俺達に依頼したのは女だ。顔はフードを深く被っていたんで見えなかった。だが貴族の女だってのは間違いねぇ」


「どうしてそう思ったんです?」


「喋り方が貴族特有の言い回しだった。それに用心棒を何人も連れ歩いていたからな」


「なるほど...それで依頼内容は?」


「馬車に乗っている令嬢を襲って傷物にすることだ」


「それだけですか? 殺せとは言われなかったんですか?」


「そこまでは言われてなかった。ただ、傷物にした後は好きにしていいと言われた。だから俺達はたっぷり楽しませて貰った後、娼館に売り飛ばすつもりだった」


「良く分かりました。クリス様、お聞きの通りですが、誰かに恨まれる心当たりはございますか?」


 いきなり現れたクリス様に、リーダーの男がビックリしている。実は男の後ろでずっと待機して貰っていたのだ。


「い、いいえっ! わ、私、そんな人に恨みを買うようなことしてませんっ!」


 クリス様が真っ青な顔色になりながらも強く否定する。


「フム、ということは逆恨みとかですかねぇ...」


 クリス様美人さんだもんねぇ。知らず知らず誰かの恨みを買っていた可能性はあるよねぇ。私はリーダーの男に向き直る。


「ところでその依頼人の女は、他に何か言ってませんでしたか?」


「そういえば...なんかイライラした様子で『身の程を知るがいい』とか『あの方に相応しくない』とか言ってたっけな.. 」


「なるほど...」


 考えられるとすれば、イアン様との縁談を邪魔しようとしてるってことかな? それを確認するためにも、こりゃ一刻も早くイアン様の所に行った方がいいね。


「クリス様、先を急ぎましょう。こいつらが失敗したと知られれば、更に追っ手が掛かるかも知れません」 


「わ、分かりました!」



◇◇◇



 その後は何事もなくイアン様の屋敷に着いた。


「私はクリス・エバートンと申します。エバートン子爵家の者です。お約束しておりますので、イアン様にお目通り願います」


 イアン様の屋敷の門番にクリス様がそう告げている間、私は懐かしい思いでイアン様の屋敷を見上げていた。まさかまたここに戻って来ることになるとは思わなかった。人生って何があるか分かんないよね。そんな感慨に浸っていると、


「カリナ!? カリナじゃないか! 良く来てくれた!」


「イアン様、お久し振りです」


 私とイアン様が親しそうに挨拶を交わしているのを、クリス様がポカーンとした顔で見ている。まぁそうなるよね。


「クリス様、黙っていて申し訳ありません。実は...」


 真相を知ったクリス様が目を丸くした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る