第104話 呆れた真相

「...そうだったんですか...だからカリナさんは、あんなにイアン様のことを良くご存知だったんですね...」


「クリス様、黙っていて申し訳ありません...」


「あぁいえいえ! お気遣いなく! その...言い辛かったんだなってことは良く分かりますから...」


「クリス様...」


 うぅ...ホンマにエェお人やなぁ。


「あの...一体どういう状況なのかな!?」


 蚊帳の外に置かれていたイアン様が口を挟んで来たんで、私はここに至る経緯を掻い摘んで説明した。更に捕まえておいた賊のリーダーを亜空間から出すと、イアン様の顔が真っ青になった。


「そんなことになっていただなんて...済まない...それは全て僕のせいだ...」


「えっ!? それはどういう意味なんですか!?」


「...立ち話もなんだから、続きは中で話さないか?」


 イアン様にそう言われたので、私は賊の男を門番達に預けて、久し振りにイアン様の屋敷にお邪魔した。


 私は最初、変わってないなぁ~ 懐かしいなぁ~ って感慨に浸っていたのだが、それどころじゃあないとばかりにイアン様が落ち込んでいるのが気になり始めた。


 客間に通された私達は、侍女が入れてくれたお茶を前に、イアン様が話し出すのを待っていた。ややあってようやくイアン様が口を開く。


「...実はここ最近、とある伯爵家からやや強引に縁談の話を持ち掛けられていてね...あんまりしつこいから他にも縁談の話があるんで諦めてくれないか? と言ったんだ...それが...」


「クリス様だったと?」


 私がイアン様の言葉を引き継いだら、イアン様は重々しく頷いた。


「本当に済まない...言い寄られてついポロっと家の名前を出してしまった僕の責任だ...」


 うん、それはイアン様が悪いな。しかも恐らくは...


「イアン様、それだけじゃありませんよね? クリス様の方から、女性の方から訪ねて来て欲しいだなんて、普通は言いませんよね? まず有り得ませんもん。いくら忙しいからって言ったって、普段ならなんとか時間を作ってでも殿方の方から会いに行くものですよね?」


 私はそこでいったん言葉を切ってから、


「イアン様、最初っからこの縁談乗り気じゃあなかったですよね?」


 図星を指されたのか、イアン様は項垂れてしまった。


「...ウソ...そんな...」


 クリス様は信じられないという目でイアン様を見ている。 


 うん...ショックだよね...気持ちは良く分かるよ...


 さて、これからどうしようかな...取り敢えず私は、すっかり冷め切ったお茶を一口飲んだ。

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