第94話 依頼したのは...

 翌朝、マリス様に昨夜の状況を説明した。


 ショックだったのか真っ青な顔になったが、これから捕まえた男の尋問を行うと言うと、気丈にも立ち合うと言うので一緒に行うことにした。


「誰に頼まれました?」


「......」


「私達をどうする気だったんです?」


「......」

 

「黙りですか...仕方ないですね...」


 私は亜空間に保管してあった道具箱を取り出す。お目当ての物をカチャカチャと音を立てながら探す。あぁ、あったあった。


「か、カリナさん!? そ、それは!?」


「圧着ペンチです。これで手足の指の爪を一枚ずつ剥いで行こうかなと」


 それを聞いた男の顔が青くなった。マリス様は青を通り越して白くなってる。

  

「さてさて、手から行きます? 足から行きます?」


 私は圧着ペンチをカチャカチャ鳴らしながら男に近付く。


「や、止めろ! 言う! 言うから止めてくれ!」


 男が泣き付いて来た。まだ一枚も剥がしてないのに...根性の無いヤツだ。


「で? 誰に頼まれたんです?」


「...カスパー男爵だ...」


 誰? そう思ってたらマリス様が息を呑む音が聞こえた。


「う、ウソでしょう...ユング様が...そんな...」


 マリス様が顔を覆ってしまった。知り合いなのかな? 聞き辛いな...


「あの...誰なんです?」


「...私の婚約者です...」


 マリス様が血を吐くように言った。うわぁ...それはショックだよね...でもここは聞かない訳にはいかない。私は男に向き直った。


「で? 私達をどうするように言われたんです?」


「...始末するように言われた...」


「それだけですか?」


「......」


 また黙り込んだので圧着ペンチをカチャカチャと。


「...し、始末する前に楽しませて貰ってもいいと...」


 なるほど...私達を辱しめた上で始末すると...どうせ盗賊の仕業にでも見せ掛けるつもりだったんだろう。クズだな!


 マリス様は血が滲むくらい唇を噛み締めている...可哀想に...信じていたのに裏切られたってことだよね...どんな気持ちなのか想像も出来ないけどさぞ辛いんだろな...私だったら耐えられないよ...


「...マリス様...お辛いでしょうが、この後どうします?」


「...領地に向かいます...そして官憲に訴えようと思います...」


「分かりました。では私が御者をやりますので馬車に乗って下さい」 


 御者の練習しといて良かったよ。


「...お願いします...」


 私は亜空間を解除して馬車に戻ろうとしたが...


「扉が壊されてますね...これじゃ危なくて乗れないですね...」


 困った...どうしようか...

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