第93話 夜襲
その日も昼間は何事もなく過ぎ、やがて日が暮れて来た。
やはり今日も野宿するようだ。馬車は街道を逸れ、ちょっとした木立の中に乗り入れた。
「お~い! お嬢ちゃん達! 今夜も一緒に食わねぇのかい!? 明日にゃ目的地に着いちまうんだ! 最後の夜くらい仲良くしようじゃねぇか!?」
「結構です。放っておいて下さい」
「なぁ、そう言わずに! いいだろ!? なぁなぁなぁ!?」
しつこい!
「お断りだと言ったはずです。いい加減にしてくれませんか?」
「あんたじゃ話になんねぇ! お嬢様と話をさせてくれよ! 最初の日以来、姿見てねぇぞ!?」
そう来るのは想定済み。
「お嬢様はお加減がよろしくないので休んでおられます。だからあまり大きな声を出さず、静かにして下さい」
こう言っておけば引き下がるしかないっしょ。
「なにっ!? それは大変だ! 依頼人に何かあったらいけねぇ! 診せてみろ! どんな症状かは知らねぇが、薬なら色々用意してるぜい!」
...そう来たか...面倒だな...どうあってもマリス様と顔を合わせたいらしい。それもさも心配している風を装おって。怪し過ぎる事この上ない。
「必要ありません。軽い風邪ですので。薬なら私も持ち合わせておりますのでご心配なく。ではこれで」
私は少々強引に話を打ち切った。まだなんかごちゃごちゃ言ってるが、無視して亜空間に入り込む。
「どうでしたか?」
マリス様が心配そうに聞いて来る。
「とても怪しいです。頻りにマリス様に会わせろと言ってくるので。何か企んでいて、仕掛けて来るとしたら深夜だと思いますから、マリス様はここでゆっくりしてて下さいね?」
「ありがとうございます...あの...カリナさんは!?」
「私はここからヤツらを監視します。寝ずの番になると思いますので、気にせずお休み下さい」
「そ、そんな! わ、私も付き合います!」
「お気持ちだけありがたく頂きます。マリス様はご覧にならない方がよろしいかと...」
まず間違いなく血生臭いことになりそうなんでね。
「そ、そうなんですね...」
マリス様は渋々頷いた。
◇◇◇
深夜、ヤツらが動き出した。馬車の扉を無理矢理こじ開けようとする。昨夜は鍵が掛かっていたから諦めたようだが、今夜は違った。
扉を破壊してでも中に入ろうとする。やがて馬車の扉がひしゃげて開いた。中を確認したヤツらが驚愕している。そりゃそうだ。中に居るはずの私達が居ないんだから。
ヤツらは馬車の外に出て周りを探し出した。三人の内、リーダーらしき男が指示を出している。私はその内の二人の後ろに、亜空間から近付いてサクッと始末した。一人残せば十分だからかね。
残ったリーダー格の一人は、後頭部を殴って昏倒させてからバインドロープで拘束した。フウッ...やっと終わったね。私は男を亜空間に放り込む。眠くなって来たんで、取り調べは明日行うことにした。
おやすみなさい...zzz
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