第76話 イアンの処遇

 アクセル様の元に戻ると、頭に包帯を巻いた近衛騎士団長が部下に指示を出していた。

 

 どうやら大事には至らなかったようでなによりだ。となると今、アクセル様の体は空いてるってことになる。


「アクセル様、今戻りました」


「あぁ、ご苦労様」 


「ちょっとお時間いいですか?」


「あぁ、構わない」 


 私は空いてる取り調べ室にアクセル様と入った。


「残っているのはイアン様のみです」  


「...そうか...彼は今どうしてる?」


「比較的落ち着いているみたいです。どうやら時間が掛かりそうなんで、私が『もうちょっと待って下さいね』と時折声を掛けてるからでしょうけど」


 暗がりで一人っきりってのは結構堪えているとは思うけどね...


「そうか...」


「アクセル様、イアン様を取り調べる前に、聞いておきたいことがあるんですが、よろしいでしょうか?」


「あぁ、構わない...」


「アクセル様はイアン様がこの国に来ていること、アクセル様と私に面会を求めてたことを、一ヶ月以上も前に知っていて、その上で私に黙っていましたよね? それはなぜですか?」


「そ、それは...」


 ん? アクセル様の歯切れが悪いな? まぁいいか。続けよう。


「アクセル様がイアン様にお会いになっていれば、あるいは私と会っていれば、イアン様はこんな犯罪に加担してまで私に会いに来ようとはしなかったはずです」


「......」


 ついに無言になっちゃったよ。本当にどうしたんだろ? まぁ気にせず続けるけど。


「ミネルバの掌の上で踊らされたということ自体が罪に当たるというなら、私はこれまでの功績全てを引き換えにして、イアン様の免罪を要求します。アクセル様の命を何度も救ったこと、国王陛下の病状を回復させたこと、クーデターを未然に防いだこと、まだ足りないなら」


「いや、それで十分過ぎる程だ。分かった。彼の罪は問わないことにする」


「ありがとうございます!」


 良かった...ホッとしたよ...あっ! あともう一つ。


「あの...イアン様はミネルバに連れられて、この王宮の秘密の抜け道から中に入ったって言ってました。他国の人間に知られる訳にはいかない極秘情報でしょうから、釈放する前に守秘義務の魔法契約をしておくべきかと」 


 そうすれば誰にも言えなくなるからね。


「あぁ、その必要はない。あの抜け道は埋めるつもりだから」


「えっ!? そうなんですか!?」


 ビックリだよ!


「今回のミネルバの一件で、ベルザード公爵家は間違いなく取り潰しになるからな。あの抜け道はもう必要ない」


「そうなんですね。安心しました。じゃあイアン様を出しますね?」


「あっ! ちょっと待ってくれ! その前にカリナに話しておきたいことがあるんだ」


 なんだろう?

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