第61話 ダンスレッスン カリナver.

「アクセル様と一緒のダンスレッスンですか?」


 王宮主宰の舞踏会まであと一週間を切った頃、唐突にアクセル様が言い出した。


「あぁ、カリナには当日、俺のパートナーとして一緒に踊って貰う予定だからな。今の内に呼吸を合わせておこうと思ってな」


「はぁ、それは構いませんが、本当に私でいいのでしょうか?」


「それはどういう意味だ?」


「いえ、アクセル様は意中の方と踊らなくていいのかなと」


 その人に逆恨みされたら嫌だからね。ミネルバみたいに。


「...それは気にしなくていい...」


 なんだろう? 答える前に妙な間があったような?


「そうですか。でも私、しばらく踊ってないんできっとヘタですよ?」 


 まだデビュタント前だからね。踊る機会なんてほとんどなかったし。


「構わない。俺がリードするから」


「足踏んでも怒らないで下さいね?」


 不敬とか言わないでね...



◇◇◇



 やがて始まったダンスレッスン。うん、さすがはアクセル様。リードもお手の物だね。音楽に合わせて未熟な私を巧みに操ってくれている。 


 だから私が何度もアクセル様の足を踏んでしまうことが、なんとも申し訳ない気持ちになる。いやホント、マジでごめんなさい...アクセル様が笑って許してくれるのがまだ救いだった。


 それはそうとアクセル様、ダンスってこんなに密着して踊るもんでしたっけ? なんかほとんど抱き合って踊ってるような? 気のせいかな? 私は恥ずかしくてドキドキしてるんだけど、アクセル様は平気なのかな?


 一曲が終わりに近付いた頃、アクセル様の顔が更に近付いて来て、ほとんどキスするような距離にまで接近した。私の心臓は今にも破裂しそうな勢いでバクバク言ってる。これはヤバいと思わず私が目を閉じた刹那、アクセル様が消えた。あれ!?


 私は慌てて亜空間を覗き込む。そこには呆然としているアクセル様が居た。私は急いで亜空間を解除する。


「す、すいません! 無意識に魔法を発動していたようです!」


「無意識!?」


「は、はい...恐らくですが、身の危険を感じたので発動してしまったのではないかと...」


 だってキスされるかと思ったんだよ!? 初めてなんだもん。ビックリして当然でしょ!?


「身の危険なんだ...」


 アクセル様が遠い目をして呟く。 


「あぁいえいえ! そういう意味じゃなくてですね、その...経験がないので戸惑ったというかその...」

 

 結局その後は微妙な空気の中、初めてのダンスレッスンは終了した。


 なんか凄い疲れたよ...本番大丈夫かな...



 

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