第52話 2人の姫
離宮の回廊を抜けて中庭に出ると、女の子が駆け寄って来てアクセル様に抱き付いた。
「お兄様~! お久し振りです~!」
「カーラか久し振りだな。元気にしてたか?」
「はい! お陰様で! もう! お兄様ったらちっとも離宮に来て下さらないんですもの! カーラは寂しゅうございましたわ!」
カーラということはこの娘が第1王女のカーラ姫か。黒い髪に黒い瞳。顔立ちは幼いながらも整っていて将来は美人になりそう。ただ...似てねぇ!
半分だけとはいえ、アクセル様と血が繋がってるはずなのに全く似てない。アクセル様は金髪碧眼だもんね。そこからして違う。これじゃ兄妹って言っても誰も信じないんじゃね?
そのカーラ姫は私のことを居ないものだと認識したようで、ただ只管アクセル様に甘えている。まぁ別にいいんだけどね。そもそも護衛のことなんて紹介する必要もないし。ただなぁ、今の私ってドレス姿なんだよねぇ。この格好見たら普通は誰も護衛とは思わないよなぁ。
そんなことを考えていたら、女の子がもう1人現れた。
「カーラ! 抜け駆けするんじゃないわよ! お兄様! お久し振りですわ!」
「ミランダか。お前も元気そうでなによりだ」
ミランダってことはこの娘が第2王女のミランダ姫か。茶髪にヘイゼルの瞳。顔立ちは幼いながらも美人っていうより可愛いって感じかな。ただ...似てねぇ! ×2
兄妹3人どこにも共通点が無い。いくら全員母親が違うとはいえ、ここまで似ないもんかね? そう思っていたら、カーラ姫とミランダ姫がアクセル様を巡ってケンカを始めた。
「なによミランダ! 私の方が先にお兄様と会っていたのよ! 後からしゃしゃり出て来て大きな顔するんじゃないわよ! それと私のことはお姉様と呼びなさいっていつも言ってるでしょ!」
「なあにがお姉様よ! 何ヵ月か先に生まれたからってデカい顔するんじゃないわよ! お兄様が嫌がってるのが分かんないの? あんたどっか行きなさいよ!」
右腕にカーラ姫、左腕にミランダ姫がぶら下がってアクセル様の取り合いをしている。アクセル様、モテモテですね? 本人ちっとも嬉しそうじゃないけど...寧ろおもいっきり顔を歪めてるけど...あぁ、ついに引っ張り合いになった。大岡裁きみたいになってるよ...
アクセル様、こっちを見ないで下さいよ...口パクで「助けて」って言うのも止めて...幼いとはいえ女同士の戦いに私を巻き込まないで...自分でなんとかして...
「「 あら? 」」
あぁっ! ほらほら! 2人の姫が私の存在に気付いちゃったじゃん!
「「 あんた誰よ? お兄様のなんなの? 」」
こういう時は息ピッタリだなお前ら!
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