第50話 空間魔法治療院?

「こ、これは!? 急に胸が軽くなったぞ! 呼吸も楽になった! カリナ嬢、そなた一体なにをしたんじゃ!?」


「私の空間魔法で肺に溜まっていた水を亜空間に転移しました。対症療法にしかなりませんが、効果はあったようでなによりです」


 ホッとしたよ....


「効果があるどころではないぞこれは...あんなに重かった体までなんだか軽くなったようじゃ」


「あぁ、それはですね、寝たきりで血行が悪くなっていた血管をちょっと広げて、血の巡りを良くしたからです」


 血液はサラサラ流れないとね。 


「なんと! そなたは素晴らしい! 感謝するぞ! これでまだまだ生きられそうじゃわい!」


 そう言って陛下が私の手を握って来たんだけど、


「陛下、先程も言いましたが、これはあくまで対症療法ですので、根本的な治療には至っておりません。後は医師や栄養士に任せますが、投薬治療や食生活の改善などしっかり行って下さいね? 私もまた診に来ますから」


 これだけはちゃんと言っておかないとね。治ったと勘違いされて無理されたら困るから。


「わかっておる! 毎日でも来てくれて構わんぞ!」

 

「毎日は無理です。後いい加減カリナの手を離して下さい」


 そう言ってアクセル様がペイッと陛下の手を振り解いた。すると陛下は不満そうに、


「これくらい良いではないか。減るもんじゃなし」 


「ダメです。減ります」


「嫉妬深い奴じゃのぅ~ そんなんじゃ女にモテんぞ? どうだカリナちゃん? こんな器の小さい男なんか止めて儂に乗り換えんか?」 

 

 いきなりカリナちゃん呼びされるし、乗り換えだのなんだの訳の分からんことを言われるしで、混乱している私に代わってアクセル様が答えてくれた。


「母上、こいつ一思いに殺っちゃっていいですかね?」


 いやいや、なに物騒なこと言っちゃってんの!?


「そうね。苦しまないように殺っちゃって?」


 いやいやいや、王妃様もなに言っちゃってんの!?


「息子と嫁が怖過ぎる件について...」


 ほら、陛下が項垂れちゃったよ!?


「ねぇカリナちゃん、そんな色ボケは放っておいて。実は私、最近肩凝りが酷いのよ。これも血行が良くないせいなのかしら? ちょっと診て貰えない?」


 色ボケって...あとカリナちゃん呼びは確定なのね...


「あ、はい。じゃあちょっと診てみますね」


 陛下の側を離れる時「カリナちゃ~ん、行かないで~」ってすがり付いて来られたけど、これまたアクセル様がペイッと。


「あ~...確かに血行が良くないですね~ これでどうでしょうか?」


 血管拡張!


「凄い! 肩が軽くなったわ!」


「良かったです。他に悪い所はございませんか?」


「あ~ そう言えば最近は腰が痛いのよね~」


「骨盤が歪んでいるせいですね。女性に多く見られます。特に出産を経験した人に。これでどうですか?」


 骨盤矯正!


「凄い! 凄い! ウソみたいに腰が軽くなったわ! カリナちゃん、ありがとう! アクセル! あんたこの娘を逃がしちゃダメよ!」


「分かっておりますとも」


 なんか不穏な言葉が聞こえたんだけど...私どこにも逃げたりしないよ?

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