第49話 国王のお見舞い
「カリナ、今日は父上のお見舞いに行く。そのつもりでいてくれ」
その日の朝、執務室でアクセル様にそんなことを言われた。
「はぁ...分かりました」
良く分からないがそう答えておいた。まぁ、アクセル様のお父上と言えば国王陛下なんだから、側に付いてる私に粗相するなよって意味なんだろうな。そう解釈したんだが...
「じゃあ、早速ドレスに着替えてくれ」
「またこのパターンですか!?」
「お前達、入って来い」
そう言ってアクセル様が指を鳴らすと、またもや侍女軍団が現れた。この間も思ったけどさ、あんたらヤケに手際が良過ぎない!? そうこうしてる間に、私は侍女軍団に再びドナドナされて行ったのだった...あ~れ~ ×2...
◇◇◇
アクセル様に付いて初めて訪れた離宮は、王宮をそのまま小さくしたような感じの場所だった。所々に飾られた彫刻や絵画は、明らかに値打ち物なのだろうなと思われるとても趣味の良い物ばかりだった。
初めて対面したアレクセイ陛下は、そのまんまアクセル様に歳を取らせたらこういった感じになるんだろうなって思うくらい、アクセル様に似ていてビックリした。紛うことなき親子だわ。
だがその体は、病に冒された為か気の毒なくらいに痩せて骨と皮だけになっていた。見ていて痛ましく感じるほどに弱々しい。それでも眼光だけは鋭いままだった。たとえ病に倒れても国王としての威厳を感じさせる。
その側には看病のためイザベラ王妃が付き添っていた。こちらは看病疲れだろうか、うっすらと目の下に隈が浮かび窶れて見えた。アクセル様のお母上だけあって、美しいのはもちろんだが、心なしか予め聞いていた実際の年齢よりも老けて見えた。やはり気苦労が絶えないのだろう。
「父上、お加減は如何ですか?」
「アクセルか。良く来てくれた。忙しいのにわざわざ済まんな。今日はいつにも増して体調が良いんだ」
「それはようございました」
「ところでアクセル、そちらのお嬢さんは?」
「国王陛下、王妃殿下、お初にお目に掛かります。アクセル様の護衛を勤めております、カリナ・フォーサイスと申します。以後お見知り置き下さいませ」
そう言って私は、本当に久し振りのカーテシーを披露した。めっちゃ緊張した!
「おぉっ! そなたが! なんと美しい所作だ! とても可憐だ!」
「まぁまぁ! アクセルが言っていた通りね! 本当に可愛らしいお嬢さんだこと!」
な、なんかお二方にベタ誉めされてこそばゆいんですけど! アクセル様、私のことなんて伝えたの!? 私の顔真っ赤になってない!?
いや、そんなことよりも実はさっきから気になっていることが...
「あの...差し支えなければ陛下のご病状をお聞きしても?」
「あぁ実はな、肺の病なんじゃよ。ちょっと動いただけですぐ息切れするし、横になっていると咳が止まらなくなってな...難儀しとる...もうすぐお迎えが来るのかも知れんな...」
「あなた、そんなことおっしゃらないで!」
「そうですよ父上! 医者も言っていたではないですか! 肺に溜まった水が抜ければまた元気になると!」
「そうは言っても、色々な薬を試したが効果はなかった...治癒魔法でも治らなかった...もう諦めるしかないじゃろう...」
「父上...」「あなた...」
治癒魔法じゃ怪我は治せるけど病は治せない。病の場合は根本的な原因を取り除かないことにはまた再発しちゃうからね。
私の目には陛下の二つの肺に水が溜まっている様子がさっきから見えている。それは黒い塊のようになっている。私の空間魔法ならその塊を取り除いて、少しでも苦しみを軽減させてやることが可能だ。まぁ対処療法にしかならないんだけどね...でもやらないよりはマシだろう。
「陛下、お体に触れてもよろしいでしょうか?」
「ん? 構わんぞ? そなたのような美しく若い女に触って貰えるのは嬉しい限りじゃよ。ふぉっふぉっふぉっ」
この人、好色なのは死んでも治らないかもね...息子と嫁が冷たい目で見てるよ...
「では失礼して」
私は陛下の体に触れ、空間魔法を発動した。
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