第44話 二人の想い

 今日も今日とてカリナに課題を渡す。


 だが元々の頭の出来が良いのか、彼女は早々に今日の分を終わらせてしまう。時間の空いた彼女が何をしているのかというと、


 ポスン...ポスン...ポスン...ポスン...ポスン......


 と、ただひたすらに執務中の俺の背中目掛けて、丸めた紙クズを投げ付けて来る。


 ...なんの嫌がらせだ? これは...ハッ! ま、まさか! 俺が密かに進めている『カリナ王子妃教育計画』に気付いて、無言の抗議を行っているんじゃあるまいな!?


 カリナの真意が分からず、俺は恐る恐る聞いてみることにした。


「あ、あの、カリナ!? 何をやっているのかな!?」


「あぁ、お気になさらずにお仕事続けて下さい」


「いや、そう言われても気になってしょうがないんだけど...悪戯するなら他所でやってくんない!?」


「悪戯じゃありません! これは鍛練なんです!」


「鍛練!? なんの!?」


「前にお話しした、私が常時発動中の亜空間シールドを、私以外の人の周りにも展開できないかと思いまして」


「あぁ、あの自分が許可した物以外は、触れようとする物全て亜空間に引っ張り込むっていう例のヤツ!?」


「はい、そうです! これが完成すれば、アクセル様を狙う輩が剣やナイフで迫って来たとしても、体に触れる直前に消すことが出来ますし、上から物を落とされても大丈夫です! 酸をぶっかけられても平気です! あと警戒するのは毒殺くらいになるので、私の安心感が格段に上がります!」


「な、なるほど...良く分かったけど、それと紙クズを投げ付けるのにどういう関連が!?」


「試行錯誤を繰り返しているんです。私もこのシールドをモノにするまで、何千何万回と小さな亜空間を作っては失敗し作っては失敗しを繰り返し、やっとモノにすることが出来たんです。だから鍛練あるのみなんです!」


 そう言ってカリナはまた...


 ポスン...ポスン...ポスン...ポスン...ポスン......


 と、紙クズ投げを繰り返す。


 俺のためを思ってやってくれているんだから、これ以上文句は言うまい。俺はチラッと後ろを覗いて見る。カリナの真剣な顔が目に入る。額に汗を浮かべながら、俺のために一生懸命に...


 めっちゃ可愛いじゃねぇか!


 俺がカリナを王子妃にと望む理由は、カリナの類い稀なる能力を欲しているからだけじゃない。初めて会ったあの日、俺は一瞬でカリナに恋をしたからだ。


 能力云々はあとから付いて来たモノで、俺はそんなもん無くてもカリナが欲しくて堪らなくなった。誰にも渡したくないと思った。そう、カリナが言ってた元婚約者とやらにも。


 絶対に離すもんか! 


 近々行われる予定の王家主宰の舞踏会、カリナには俺が用意したドレスを着て貰う。色は俺の瞳の色に合わせた碧色で、アクセサリーは俺の髪色に合わせた金色で統一する。


 これで誰が見ても、カリナは俺のモノだと認識することだろう。今からとても楽しみだ。


「カリナ、そろそろ騎士服の採寸の時間じゃないかい?」


「あっ! そうでした! ちょっと行って来ますね!」


「行ってらっしゃい」


 そう、カリナにはいつも着ている騎士服の採寸だと言ってある。だが実際は...ぐふふふ♪

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