第35話 手練れ
私は未だに状況が良く分かっていないカイル様に説明するために、亜空間の一部を可視化した。
「なんと!? この町の衛兵が裏切ったというのか!?」
「いえ、恐らく賊が衛兵の格好に偽装しているだけだと思います」
「そうなのか!?」
「えぇ、この町の衛兵全てが裏切ったのだとしたら、私達の姿が消えた段階で彼らは応援を呼ぶと思うんです。ですが未だにそんな気配はなく、彼らだけで探しているようですから」
さすがにこの町の衛兵全てが裏切ったとは思いたくないしね...そうなったら最早クーデターだもん...
「なるほど...確かにその通りだな」
「しかし衛兵に偽装するなど...なんて狡猾な...」
そこへアクセル様とアラン様が合流した。
「アクセル様、取り敢えずは先程と同じように、一人を残して全員を始末するということでよろしいでしょうか?」
「そうだな...済まんがそれで頼む。しかし、さっきの孤児院の時も思ったが、カリナは良く気付いたよな。感服したよ...」
「いえ、そんな...」
アクセル様に近付く者は、どんな相手であっても警戒して見るからね。それで違和感に気付いたんだよ。
「すいません...俺が気付かなかったばかりに...」
アラン様が落ち込んでる。偽衛兵を連れて来ちゃったからね。無理もないけど、ここは慰めてあげないと。
「アラン様は悪くないですよ。私だって敵が衛兵の格好してるだなんて思いもしませんもん。それだけ敵が用意周到だったってことです。さあ、落ち込んでる暇はないですよ? 敵がこれ以上の増援を呼ぶ前にさっさと始末しちゃいましょう」
「あぁ、そうだな...良し! 行こう!」
アラン様が元気になって良かったよ。
「敵は右と左に三人ずつ分かれてますね。では、カイル様とアラン様はそれぞれ右と左をお願いします。ヤツらの背後に回ってから亜空間を解除しますんで。私はお二人の打ち漏らしを片付けます」
「「 おうっ! 」」
「アクセル様は」
「分かってる...ここで待機してるよ...お前達、くれぐれも気を付けてな?」
「「「 はいっ! 」」」
◇◇◇
「では解除しますよ?」
「いつでもいいぞ!」
「やってくれ!」
私はヤツらの後ろに回り込んでから亜空間を解除した。いきなり背後に現れた私達に虚を衝かれたヤツらは、一瞬慌てた様子を見せたがすぐに体勢を立て直した。どうやら相当な手練れらしい。
その中の一人に狙いを定めた私は、亜空間に隠れそっと後ろに回り込み後頭部に一撃...食らわせようとしたが、既の所で躱されてしまった。躱されたのは初めてだった。
こいつ本当に強いな!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます