第34話 刺客2

「さて、誰に頼まれた?」


 今、アクセル様が直々に男達の1人を尋問している。最初に私が倒したヤツだ。わざと生かしておいた。残りは全員死亡している。


 アラン様はこの町の衛兵を呼びに行っていて、ここに居るのはカイル様と私とアクセル様だけだ。カイル様は他にも伏兵が居るかも知れないので、辺りを警戒している。


 てっきり黙りを決め込むかと思った男は、意外にも素直に白状した。


「...か、金で雇われたんだ...こにに馬車を立ち往生させて、通り掛かる豪華な馬車を襲えって...そいつらも同じだ。今日、初めて顔を合わせた。雇ったヤツからは人数合わせだって言われた...」


 そう言って男は倒れてる連中に目を向けた。


「お前らを雇ったヤツってのはどんな男だった?」


「...知らねぇ...全身黒尽くめでフードを深く被ってやがったから顔は見ていねぇ...」


「もう1つ聞く。この先にある孤児院の子に爆弾を渡したのは、お前らの内の誰か1人か?」


「...爆弾? 孤児院? なんのことだ? 俺達は全員、ここで待機していただけだぞ?」


 ウソを吐いている様子はない。どうやら本当に知らなかったようだ。ということは爆弾をあの女の子に渡したのは、こいつらを雇った男本人か若しくはその仲間ということだろう。


 その時、アラン様が衛兵を5、6人引き連れて戻って来た。


「殿下、遅くなりました」


「ご苦労、アラン。お前達、後は任せる」


 アクセル様が衛兵の1人に声を掛ける。するとその衛兵が申し訳なさそうな顔をして、


「アクセル殿下、昼日中このように町中で蛮行を働く輩が出るとは...町の治安を預かる身として大変申し訳なく...」


 そう言って近付いて来る衛兵に違和感を感じた。アクセル様の御前だというのに、左手を剣の柄に掛けたままなのだ。そう、まるでこれから抜刀するぞと言わんばかりに。私はアクセル様のすぐ側に寄った。


 衛兵が抜刀するのと、私がアクセル様を亜空間に引き込むのはほとんど同時だった。


「うおっ!? な、なんだ!?」


 困惑しているアクセル様は放置して、次はアラン様も一緒に亜空間へ引き込む。


「お前らぁ! よくもっ! ってあれ!?」


 衛兵...いや偽衛兵に斬り掛かろうとしていたのだろう。アラン様も困惑しているが同じく放置する。まだカイル様が残っているからだ。私は辺りを警戒しているカイル様に近付き、問答無用で亜空間へ引き込む。


「どわっ!? な、なんだ!? なにが起こった!?」


 3人とも無事確保に成功したので、改めて元の場所を観察してみる。いきなり消えた私達を探して、右往左往している様子の偽衛兵どもが見える。全員が抜刀している。


 先程、アクセル様が尋問した男は、口封じのためか偽衛兵どもに始末されたようだ。


 さて、これからどうしようか?

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