第33話 刺客

 私はカイル様とアラン様にもそっと耳打ちする。


「な、なんだと! ばくだ...ムググ!」


「シッ! 声が大きいです!」

 

 カイル様! 耳打ちした意味ねぇじゃんか!


「すぐにここを離れよう」


 アラン様が冷静にまとわり付く子供達を引き剥がしながらそう言った。アクセル様が職員に断りを入れ、名残惜しそうにしている子供達に見送られながら、私達は孤児院を後にした。



◇◇◇



 馬車に乗った後、私はさっき黒い箱を放り込んだ亜空間をそっと覗いて見た。案の定、箱は粉々に砕け散っていた。相当威力のある爆弾だったらしい。


「思った通り爆弾でした。あのままだったら、アクセル様だけじゃなく子供達まで犠牲になっていたことでしょう」


「そうか...なんてことだ...犯人は血も涙も無いのか...」


 ホントにね...


「しばらく慰問や視察はお控えになった方がよろしいかと...」


「あぁ、そうだな...ありがとう、カリナ。君のお陰で俺だけじゃなく子供達まで救われた」


「勿体ないお言葉です」


 その時、馬車が急停止した。


「何事だ!?」


「殿下、この先で馬車が立ち往生しています」


 見ると、確かに1台の馬車が横になって止まって道を塞いでしまっている。男が1人、車輪の側で何やら作業している。怪し過ぎる事この上ない。


「私が行って来ます。アクセル様はいつものように避難していて下さい」


「おい、カリナ! ちょっと待っ」


 皆まで言わせず、アクセル様を強制的に亜空間へ放り込む。カイル様とアラン様に目配せして、男に近付き声を掛ける。


「どうしました?」


「いやぁ、ご迷惑をお掛けして申し訳ありません。ご覧の通り車輪が壊れちまいましてね。難儀しているところなんですわ」


 男は申し訳なさそうな顔でそう言った。


「大変ですね。お手伝いしましょうか?」


「いいんですか? すいません。じゃあここを抑えて貰っていいですかね?」


「どこですか?」


「ここです...よっ!?」


 男が短剣を突き出して来たので、私はサッと亜空間に避難する。やっぱりね。


「なっ!? き、消えた!?」


 私が消えたことで戸惑っている男の後ろに回って、後頭部をレイピアの柄で殴る。


「ぐぇっ!?」


 男が昏倒した。殺さないのは聞きたいことがあるからだ。すると、馬車の扉が開いてそこから5、6人の男達が飛び出して来た。 

  

「やっちまえっ!」


 そんな掛け声と共に私達の馬車へ向かって行く。カイル様とアラン様がそれぞれ1人ずつ相手取る。私はそっと後ろから近付いて男達を1人ずつ始末する。1人生かしておけば後は殺しちゃっていいからね。


 男達はあっという間に片付いた。

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