第9話 助けた人は
足の治療を終え腕の治療に移る前に、私は男性のことをマジマジと観察した。年の頃は15、6歳くらいだろうか、金髪碧眼のキラキラ王子様スタイルのイケメンさんだ。着ている服が高そうだから余計にそう感じる。さぞやモテるんだろうな。
なんとなくだが、誰かに雰囲気が似てるなあと思ったら、そうか、イアン様に似てるんだ。年の頃も同じくらいだし。イアン様もイケメンだし。ただイアン様よりこの男性の方が体つきとか顔つきとか逞しい感じがする。イアン様はもっと優しい感じだもんね。
おっと、今はそれどころじゃなかった。
「腕を見せて下さい」
「あ、あぁ...」
「こっちは足ほど酷くないですね。血止め薬を掛けます。また滲みますよ?」
「うぐっ!」
「これで良し。血は止まったみたいですね。包帯を巻きましょう」
「あ、ありがとう...」
「困った時はお互い様ですよ。気にしないで下さい」
「...名前を聞いてもいいかな?」
「カリナです」
「名字は?」
私は言葉に詰まった。家名を名乗るべきか? いや、既に貴族じゃないんだから、名乗らない方が良いだろう。追っ手も隣国までは追って来ないとは思うが、念のために痕跡は残さない方が良いだろう。
「ただのカリナです」
「そうか。俺はアクセル・フォン・オスマルクだ」
「えっ!? えええっ!? そ、それって...」
「あぁ、この国の第2王子だ」
ま、マジですかぁ~!
◇◇◇
「あ、あの、私、王子様に大変失礼なことを...」
不敬罪とかにならないよね...
「それこそ気にしなくていい。っていうか治療してくれて感謝している。それと狼どもからも救ってくれた。君は命の恩人だ。本当にありがとう」
「め、滅相もございません...もったいないお言葉で...」
「ところで、この空間は亜空間だとさっき言ってたな?」
「は、はい、私は空間魔法が得意ですので。っていうか、それしか使えませんので。すいません、治癒魔法が使えなくて...」
その分、薬は多目に亜空間へ収納しておいたんだ。役に立って良かったよ。
「それを言ったら俺なんか攻撃魔法しか使えないぞ? それもショボい威力しか出ない。だから情けないことに、たかが狼程度にこの様だ。君はもっと誇っていいと思うぞ?」
そういうもんなのかな...良く分かんないや。
「あ、ありがとうございます...」
「ところで...カリナって呼んでも?」
「は、はい、どうぞお好きに...」
「カリナ、この空間はいつまで維持できるんだ?」
「えっと、私が解除しない限りいつまでも...」
「それ凄いな...だが、このまま狼が諦めてどっかに行くのを待ってるしかないってのも癪だな...」
王子様の怪我も早くちゃんとした治癒しないとマズいしね。だからここは私が動くことにする。
「あの、王子様。良ければその剣を私に貸して貰えませんか?」
「剣を? どうする気だ?」
「私が狼を仕留めて来ます」
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