第10話 空間魔法使いの戦い方
「君が倒す!? どうやって!?」
あぁ、王子様の疑問はもっともだよね。だから私は論より証拠だとばかりに、亜空間の一部を透明にした。今まで黒一面だった場所に、突如として現れた元の世界の光景を目の当たりにした王子様がビックリする。
「こちらをご覧下さい。ここに映っている光景は、私が亜空間を発動して王子様を保護した場所の現在の姿です。あぁ、向こうからは見えないので、ご安心下さいませ」
見ると、狼どもが執念深く辺りを嗅ぎ回っている様子が分かる。
「これは驚いた...向こうは我々を感知できないのだな...」
「はい、私達の姿も匂いも音も全て遮断してますから」
「それでどうやって倒すのだ?」
「まぁ見てて下さい。では剣を」
先に話しちゃったら楽しみがなくなるでしょ?
「あ、あぁ...」
うぐっ...結構重い...だがまぁ、振り回す訳じゃないからなんとかなるかな。
「じゃあちょっと行って来ますね。あ、王子様は動かないで下さいよ? 傷口が開いたら大変ですからね」
「あ、おい...」
王子様の焦ったような声を背中に聞いて、私は亜空間の中に潜って行った。
◇◇◇
最初の獲物は、私達の消えた場所のすぐ近くに居るヤツに決めた。私は亜空間の中を移動し、ヤツの背後に回る。そして腕だけを亜空間から出して、ヤツの急所、首の後ろにおもいっきり剣を突き立てる。端から見れば、何も無い所からいきなり剣が出て来たように見えるだろう。
「キャウンッ!」
一撃でヤツは絶命した。私は再び亜空間に隠れる。すると仲間の声に反応したのか、狼どもがわらわらと集まって来た。仲間の死体を見付けて、興奮したり警戒を強めたりしている。
私はその内の一匹に狙いを定める。最初のヤツと全く同じ要領でサクッと始末する。
「キャウンッ!」
これで二匹目。さすがに狼どもも動揺したのか、この場から離れて行くヤツも出て来た。だがまだ性懲りもなく残っているヤツも何匹か居る。その中に、明らかに他の個体より体格の大きなヤツが居た。
この群れのボスだろうか? ボスが殺られれば群れは敗走するだろう。そう思った私はボスに狙いを定める。だがさすがにボスだけあって、中々隙を見せない。
背後を配下に守らせているので近付けない。だから私は...
ボスの頭の上に回り込み、脳天目掛けて剣を突き立てた。
ん? 誰が平行移動しか出来ないなんて言った? 立体移動だって出来るよ? だって空間を支配してるんだもん。
ともあれ、ボスが死んだことで統制が取れなくなった群れは、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。私は王子様の所に戻った。
「ただいま戻りました。如何でしたか? これが空間魔法の使い手の戦い方です」
王子様は無言だった。
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