第15話

「社長!! そのカット、亜蘭カノジョにやらせてみて下さい」

 僕は亜蘭を推薦した。


「ン……? その子に」

 社長は渋い顔だ。


「えェ……」

 亜蘭アランもビックリして僕を見つめた。



『な、何、その子ッて、誰……!!

 女性のアニメーター……、誰なの?』

 スマホの向こうで制作デスクの下野も聞き返した。下野からすれば渡りに船だろう。



「もちろん、彼女一人じゃ、出来ないでしょうけど……。

 最後は、僕も手伝いますから」

 頭を下げて懸命に頼んだ。


 どうやら今夜は久しぶりに徹夜を覚悟しなければならないだろう。



「ン…、ポーが……」

 社長も眉をひそめた。



『もしもし、誰が引き受けてくれるの。

 ポーッて誰……? マジで引き受けてくれるの』

 デスクの下野は、ワラにもすがりたい心境なのだろう。早口で、まくし立てた。



「その代わり、ひと晩でそのカットを描きあげたら、亜蘭アランをスタジオに入社させて下さい!!」

 こうなったら実力行使で乗り切ろう。

 どうせ乗りかかった船だ。

 


「うゥ〜ン……」社長は腕を組んで考えた。


『もしもし、やってくれるんだねェ……?

 バンちゃん!!』

 下野も必死だ。落とすかどうかの瀬戸際なのだろう。



「フフ、面白いじゃン!! バンちゃん」

 姫乃樹アリスは他人ひと事のように愉しそうだ。



「うゥン……、まァ、最後はポーが責任を持つなら、引き受けようか」

 仕方なく社長も了承した。



『もしもし……、じゃ、カット持っていくからね!!』

 デスクの下野は助かったと言うように通話を切った。








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