第14話 制作デスク

『うゥン……、そりゃァ、無理だろう』

 今はお昼過ぎなので明日の朝イチまで実質、20時間もない。



 どんなカットかにもよるが、ひと晩で百枚は、かなり手馴れた実力のある動画マンでなくては出来ないだろう。



 僕でも他の仕事を放り出して、死ぬ気でやっても出来るか、どうかだ。


 それも体調によるのだが。


「百枚をひと晩なんてムリムリ!!」

 社長は、原画を見るまでもなく断った。



『いやいや、そんな事言わず、原画だけでも見てよ!! 倍は無理でも三百は出すからさ』

 デスクの下野も簡単には引き下がらない。

 普段のテレビ用の動画は、一枚、200から220円くらいだ。



 5割増しの300円は、かなり破格だと言えるだろう。

 

 もちろんそれだけスケジュール的にも大変なカットには違いない。



「いいか、下野シモちゃん!! 単純計算で、百枚を20時間ッて事は、一時間に5枚だろう。そりゃァ、口パクだけなら出来るだろうけど……」

 確かに社長の言う通りだ。


 簡単なカットなら一時間に5枚や10枚くらいは楽に描けるはずだ。


 

 キャラクターにもよるが、例を出せば【クレヨンし○ちゃん】と【機動戦士ガ○ダム】では、一枚に掛かる時間はまったく違う。


 特にサ○ライズはメカシーンもCGではなく手描きが多い。

 ブルーレイやDVDが、より売れるからだ。



 当然だがリアルなキャラクターで、衣装やアクセサリーの描き込みが多ければ多いほど、それだけ手間が掛かる。



 例えば、初期の【宇宙戦艦ヤ○ト】のメカ作監の方に聞いた話しでは、宇宙戦艦ヤ○トを修整するのに一枚、約一時間は掛かるらしい。

 当然、動画はクリーンアップしなくてはならないので、たった一枚に一時間半近くは掛かるだろう。



 その時、僕はハッとひらめいた。



「社長!! そのカット!!

 亜蘭カノジョにやらせてみて下さい」

 僕はアランを推薦した。



「え……? その子に」







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