第13話 『マックスJAPAN』の下野
どうやら社長のスマホのようだ。
おそらくこのテーマソングは仕事関係なのだろう。
「ンゥ……」社長は顔をしかめ、画面をタップしスピーカーにした。
『もしもし、バンちゃん?
『マックスJAPAN』の下野だけど』
途端に通話が流れた。
かなり慌てた口ぶりだ。
「ン……」『マックスJAPAN』の制作デスクの下野氏だ。
普通なら制作進行が連絡してくるはずだが、直々にデスクが電話してくるなんて、よっぽど急用なのだろう。
「どうした。
ケッケケェ……、制作進行が飛んだか?」
社長は冗談めかして笑った。
飛ぶとは、『辞める』という事だ。
シャレにならないが、連絡もなく辞めていく。アニメ業界には、よくある話しだ。
とにかくアニメスタジオは、どこでも給料が安い上に拘束時間は長い。
肉体的にも精神的にもキツい仕事だ。
間違いなくブラック企業だろう。アニメが好きでなくては
制作進行もアニメーターもコロコロと辞めていく。
僕の隣りの席にいたアニメーターも先週、辞めていった。
『あァ、いきなりな……、仕事をほっぽり出して、なァ……』
デスクの下野は困り果てたような声で嘆いた。
「ケッケケェ……、珍しくもないだろう。
最近の『ゆとり世代』には!!」
社長も苦笑いを浮かべた。なにしろ『ゆとり世代』には考えられないスケジュールだろう。
『まァな……、ッで悪いンだけど、明日の朝イチで動画百枚なんとかならない?』
「動画百枚を朝イチで……」
チラッと腕時計を確認した。
『ううゥン……、そりゃ、無理だろう』
今はお昼過ぎなので実質、20時間もない。
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