第11話 エロ姫様だ

「……」

 美少女は無言で首を横に振った。


「なァんだ……。履歴書もないのか」

 困惑気味に、社長は座っている椅子をクルクルと回転させた。

 そのたびに、キィキィと耳障りな音が響く。



「ンゥ……🙄💦」

 懸命に僕も言い訳を考えた。

「でも……、社長!! 僕は入社試験の時、履歴書を提出しましたけど、姫も他のアニメーターも履歴書なんか出してないでしょ」

 僕はチラッとアリスを見た。


 スタジオではみんな、姫乃樹アリスの事を『姫』と呼んでいる。

 顔は清楚でインテリ風だが、下半身は自由奔放な『エロ姫様』だ。



「あァ……、そう言えば、私も履歴書なんか書いてないな」

 姫乃樹アリスも苦笑いを浮かべ肩を竦めた。


「ン……」

 そんなことよりも早くオッパイをしまって欲しい。




 ほとんどのアニメーターが口約束のような契約だ。


 誰かの紹介でスタジオに招待され空いた机があれば、そこで仕事が出来る。


 給料は安い代わりにその辺りはルーズだ。


 いつの間にか社員になっていた。



「いやいや、別に……、姫は良いんだけど」

 社長も元セクシー女優のアリスには甘い。当然だろう。

 彼女は社長の特別待遇の愛人枠だ。



 仕事も社長室でやっている。時折り盛りのついた猫みたいに『アンアン✨💕』と言う妖しげな声も聞こえてくるので困りものだ。



「ンゥ……、だいたい何歳いくつなんだ。その子は!! 

 まさか未成年じゃないだろうな」

 社長はアゴで亜蘭を差した。


「え……、あ!!」そうか。


 そう言えば彼女の本当の年齢を訊いていなかった。


 勝手に高校を卒業したと思っていた。童顔なので年齢不詳だ。


 すぐに僕は横にいる亜蘭を見つめた。


 

「……」

 亜蘭はうつ向いたまま、終始無言だ。








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