第4話 制服を着たセクシードール

 美少女の亜蘭アランは愉しそうに笑顔で自転車に乗り、僕の前を走っていく。

 流麗なツインテールが揺れて可愛らしい。


 彼女の後ろ姿を見つめながら僕も微笑んだ。

 こんなアイドルみたいな美少女が僕の彼女だったら最高に違いない。



 もちろん、そんなことは絶対にないだろうけど。




「ねえェ、ねえェ……、どっち」

 アランは少しスピードを緩め、振り返って僕に訊いた。



「え、あァ……、そのまままっすぐだけど、マジで僕の家へ来る気なの」

 この子は本気で、こんな夜遅くに初対面の独身男性の部屋へ泊まる気なのか。

 


 それとも気の弱そうな僕なら安心だとタカをくくっているのだろうか。

 もちろん僕だって幼気いたいけな女の子を襲う気はないが。



「フフゥン……、なによ。

 彼女と同棲中……?」



「いや、別に同棲するような彼女なんていないけど……」

 それどころか、生まれてからずっと彼女がいない。

 彼女居ない歴は年齢と一緒だ。


「だよねェ……。ポーは童貞チェリーボーイだもんね……✨🤭✨✨」

 バカにするようにクスクスと嘲笑った。

 キュートな美少女のクセにかなりの毒舌家だ。



「う、うるさいな。童貞ボーイじゃねえェよ……」

 つい強がりを言ってしまった。


 これが夜道で男女のする会話か。しかも相手は初対面の制服を着た女子だ。



 慌てて辺りを見回した。幸い人通りはない。こんな会話を見知らぬ通行人が聞いたら何て思うだろう。



「ウソォ……。若手の草食系アニメーターッて、なんでしょ」



「あのなァ……、どこの偏見かたよったデータだよ。見た目で判断するな!!

 童貞かどうかなんて、個人情報だからわからないだろう!!」



「キャッキャッ、ポーだって二次元の美少女キャラで、毎晩、ソロ活動ライブをしてるクセに」

 可愛らしい顔をして、かなりドギツい下ネタもオッケーのようだ。


「うゥ、バカなのか。

 毎晩、ソロ活動なんかしてねえェよ……」

 倍近く歳上だと言うのに、彼女の下ネタにドキドキしてしまった。



「なに、じゃァ、制服を着たセクシードールとか、部屋の中に置いてあるの?」


「ねえェよ……。そんなセクシードールなんて!!」

 ないけど……。



「じゃ、ポーんに泊まっても良いじゃン」



「それは……」

 文句を言いつつ、いつの間にか自宅の近くまで来てしまった。








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